22年8・9月号のリニューアルでは、コロナ禍以降の新時代について、未来の理想を描き、社会実装する個人や組織の「新しいビジョン」が鍵を握るとした。
今号では、次の10年を見据えた特集テーマに「THE NEXT IMPACT THING」を掲げた。3号に共通するのは、「起業家精神」が生み出す価値へのポジティブな思いだ。大転換期を迎える日本経済に「次のインパクト」をもたらすのは、間違いなく次世代の人々が持つ起業家精神だ。『Forbes JAPAN』では、これからも物事をまるで違う目で見る人たちの壮大なビジョンと挑戦に敬意を払い、世界を変える人々の姿を伝え続けたい。
小川嶺は、2019年のForbes JAPAN 30 UNDER 30特別賞の受賞から飛躍的に成長を遂げ、まさに日本を代表する経営者のひとりになった。早ければ7月に東京証券取引所のグロース市場に新規株式公開(IPO)することが決まったタイミーで、今掲げるミッションとは。
タイミー代表取締役の小川嶺は2019年、23歳のときにForbes JAPAN 30 UNDER 30特別賞を受賞した。前年に第三者割当増資で3億円の資金調達を達成し、登録者数10万人を達成したタイミングだった。小川は当時の自分を「起業初期の『自分は絶対に行ける、合っている』と良い意味で自分自身を洗脳する時期を超え、『本当に日本の“はたらく”を変える、社会に必要なサービスになれる』という確信をもち始めた節目の時期」と振り返る。
その言葉通り、23年11月にForbesJAPANが発表した「日本の起業家ランキング」で2位に選出。受賞当時のインタビューで「世界トップ5に入る経営者になりたい」と語った壮大な夢に一歩ずつ近づきつつある。
近年、タイミーがけん引するスポットワーク市場は好調だ。24年3月にはメルカリが「メルカリ ハロ」を開始し、リクルートも今秋の参入を発表。業界団体のスポットワーク協会によると、サービスの登録者数は複数登録も含め約1500万人規模に達している。
小川が18年に開始した同社のスキマバイトサービス「タイミー」は現在、約9万8000社の導入事業者数を誇り、働き手の利用者は700万人(24年2月時点)を超える。23年には総額130億円の資金調達を達成し、累計調達額は約403億円となった。
タイミーでは、働きたい人がアプリから仕事に申し込むだけで面接不要で最短1時間から働くことができる。時間を有効活用して稼ぎたい学生などの働き手と、人手不足にあえぐ物流業者や飲食業者などを結ぶ“インフラ”として、なくてはならない存在となっている。