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2024.06.27 15:00

生成AIはクリエイティブな仕事を奪うのか? 先走った結論はやめよう

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OpenAIの最高技術責任者であるミラ・ムラティの発言が、先週行われた討論で大きな物議を醸した。彼女は「生成AIにより、一部のクリエイティブな仕事は消えるかもしれないが、そもそもそれらの仕事は存在すべきではなかったのかもしれない」と発言したのだ。

ムラティの発言はAIがクリエイティブな活動を後押しするという文脈で述べられたものだったが、多くの人々はそのようには受け取らなかった。反発のスピードは速く、激しいものだった。デア・オバサンジョはX(旧ツイッター)の投稿で「OpenAIの使命は、あらゆる経済活動で人間を置き換えられる汎用人工知能(AGI)を作ることだ。仕事を奪うことが最終目標なのだ」と書いた

ジョバンニ・コランティオニオは別のX投稿で「ムラティは、この侮蔑的な発言の他に、生成AIが人々を『よりクリエイティブに』すると強調し続けている。しかし、どうやって?」と問いかけた。「文字通り、ここでは人間は何も創造していない。機械が人間の代わりに物事を創造しているのだ。これは創造性を育むのではなく、むしろ創造性を阻害している」

AIの擁護者たちは「創造性の民主化について語るが、そんなことはテクノロジーは行わない」とコランティオニオは付け加えた。「アイデアを実現するという真のクリエイティブな行為を人々に思いとどまらせ、その代わりに『創造性』をビッグマックのように組み立てて提供できるものにすることを奨励しているのだ」

AIは、特に生成AIは、クリエイティブな仕事、さらには創造性の本質そのものを奪う道を歩んでいるのだろうか? グラフィックス、イラスト、文章コンテンツ、写真、映画、ゲーム、その他のクリエイティブな活動において、AIはボタン一つで新しいものを生み出すことができるのだろうか?

結論には時期尚早だが、これまでのところ、証拠はそれを否定する方向を示しているようだ。

人材サービス会社のロバート・ハーフが今年第1四半期に発表したレポートによると、「2024年もクリエイティブ人材の獲得競争には歯止めがかからない」という。同社の調査対象となったクリエイティブおよびマーケティング部門のマネージャーの過半数の55%が、「グラフィックデザイナーからUXデザイナーまで、新しいポジションの採用を行っている」と回答し、43%が「空席ポジションの採用が必要」と答えている。

ロバート・ハーフの推計によると、2023年には少なくとも20万のクリエイティブ職が企業の給与支払い対象に追加された。米国労働統計局によると、グラフィックデザイナーとウェブデザイナーの失業率は、それぞれ2.6%と2.9%と比較的低い水準にある。

それでも、一見堅調に見えるクリエイティブ職の雇用市場の下には、長期的な見通しに対する不安が潜んでいる。Canva(キャンバ)が実施した調査によると、世界の4000人のマーケティングおよびクリエイティブリーダーのうち、69%近くが、AIによる業界全体での潜在的な雇用喪失に懸念を表明している。

調査対象のリーダーたちは、AIツールを自分たちの活動に加えることを歓迎してもいる。少なくとも69%が、生成AIはチームの創造性を高めていると考えている。そしてほぼ全員の97%が、生成AIの台頭を受け入れており、72%が「十分に」受け入れ、25%が「ある程度」受け入れていると回答している。
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翻訳=酒匂寛

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