生活費が高騰するバルセロナ
カタルーニャ州の州都バルセロナでは、観光客向けの短期賃貸物件ブームが生活費の大幅な高騰を招いている。この10年間で家賃相場は約70%上昇し、住宅価格も40%近く上がったため、アパート1室ですら多くの市民には高嶺の花と化していると、コルボニ市長は21日の市議会で指摘。住宅確保の問題は特に若者の間に格差を生んでいることから、市当局として抜本的な対策を講じることにしたと説明した。市長は大手紙エル・パイスによると、市長は「実家を出たいと願う若者の大多数が、バルセロナを離れなければならない状態を放置はできない」と述べた。
世界で2番目に人気の旅行先、スペイン
スペインは世界有数の人気旅行先だ。市場調査会社スタティスタが今月発表した報告書によれば、スペインの外国人旅行者受入数はフランスに次ぐ世界2位で、2023年には8500万人を超え、コロナ禍前の記録である2019年の8300万人を上回った。また、バルセロナを擁するカタルーニャ州は、2023年にスペイン全土で最も多くの外国人観光客を受け入れた地域だった。バルセロナでは近年、短期賃貸アパートの認可取得のハードルがどんどん上がっている。2012年以降、市内で「観光用住宅(Vivienda de Uso Turístico)」と定義されたアパートを31日未満の賃貸契約で合法的に貸し出すには、観光ライセンスの取得が要件となった。この規則は昨年強化され、観光客向け賃貸アパートの認可は人口100人あたり最大10戸に制限された。
さらに、バルセロナ市は観光客向け物件の永久認可を廃止し、5年ごとの更新を義務付けた。当局はまた、違法な観光客向け賃貸物件の摘発と閉鎖に向けた取り組みを強化している。
観光客向け違法物件との闘い
一連の措置により、2016年以降に9700戸の違法な観光客向け賃貸物件が閉鎖され、約3500戸のアパートが地元住民向けに開放された。今回の市当局の動きはこれまでで最も思い切った対策で、バルセロナを拠点とする有力日刊紙ラ・バングアルディアは「血みどろの司法合戦」に発展するだろうとの見方を示している。コルボニ市長の計画通りに事が進めば、市議会は遅くとも2028年11月までに、現在市内にある1万0101戸の観光客向け賃貸アパートの認可を取り消すことになる。
観光業界には衝撃が走っており、バルセロナの観光客向け物件経営者組合をはじめ幅広い関係者からの反発が予想され、長引く法廷闘争に発展する可能性が高い。
一方、バルセロナの短期賃貸物件を多数掲載しているバケーションレンタル・プラットフォームのAirbnbは、まだ公式声明を出していない。
(forbes.com 原文)