ロシアが2022年2月にウクライナに対する戦争を拡大する前にはおよそ1万2000人が暮らし、現在はほとんどひとけのないこの小都市を攻略することは、ウクライナ側よりも多勢で重武装のロシア軍にとってそれほど難しくないはずだった。だが10週間後、ロシア軍はこの正面で行き詰まり、人員をひどく損耗している。ロシア側はおそらく、チャシウヤール市内にある数千の建物のうち、郊外の数十棟しか占拠できていない。
逆にウクライナ側はここ数日、チャシウヤールの南で逆襲をかけ、クリシチウカ村を占拠していたロシア軍部隊を駆逐した。ロシア軍はチャシウヤールを包囲するために南北からの挟撃を試みており、クリシチウカ村は南側の要所のひとつだ。
ウクライナ軍の第41独立機械化旅団、第67独立機械化旅団、第56独立自動車化旅団、第5独立強襲旅団、第241独立領土防衛旅団を中心とするチャシウヤールの防衛は、予想に反して持ちこたえてきた。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは5月下旬時点で、チャシウヤールは「最終的にはロシア軍の手に落ちるだろう」との見解を示していた。
そうなる可能性はなお残っているものの、チャシウヤール正面のロシア軍の旗色はよいようには見えない。ロシア軍は時機を逸したのだ。
つい4月上旬には、ウクライナ軍の各旅団は弾薬が絶望的なまでに不足していた。あらためて言うまでもなく、米国の新たなウクライナ向け支援が昨年10月以降、米議会のロシアに都合のよい共和党一派の手で阻まれていたのが主な原因だった。「われわれの砲は沈黙していました」。ウクライナ軍の第5独立強襲旅団所属の軍人、ドミトロは地元メディアのキーウ・インディペンデントにそう語っている。