暮らし

2024.07.11 15:15

続・徹底ルポ「40代後半で卵子凍結」 採卵、卵2個保管そして

「体を張って得た」学び──

今後、自分が卵子凍結を続けるかどうかについて自分の中で答えはまだ出ていないが、一度は卵子凍結をやってみてよかった、と、筆者は思っている。

経験しないとわからないこともあるから、という一般的な結論で片付けることもできる。子どもをどうしても授かりたいという思いで不妊治療や卵子凍結を長年行われている方も多くいらっしゃるし、そういう方からすると私の動機や感慨などは軽すぎる感情だろう。

ただ、私は卵子凍結に向けて行った診察や服薬やカウンセリングなどを通じて、卵がこの体で育っているんだ、という新たな知識や感覚を知ることができたこと、さらには、根本的な疑問ではあるが、自分で問うてこなかった「ほんとうに子供が欲しいのか」という質問についても考えるきっかけとなったことが、プラスだったのではないかと思っている。

また、養子の息子がいる友人からは、なぜ自分自身の子どもを持つことにこだわるのか、世の中には親のない子どもがたくさんいるから、卵子凍結とは別に、養子を迎えることを選択肢として検討しないのか、と、問いかけられた。これも、卵子凍結を話題にしなければ、受けることのなかった問いかもしれない。

人間の寿命は伸び、それだけにますます「若さ」はもてはやされ、応じてアンチエイジングの手段も年々ブラッシュアップされている。しかし、「見た目」「美容年齢」をいかに調整しても、「生殖年齢」は、伸びる寿命に準じて伸びていない。今回の体験で、この当たり前の事実がとてもよくわかった。

仮に「見た目が30代の」40代だったとしても、30代と同程度の数(と質)の卵子を作ることはできないのだ。それは、シンプルな事実だ。

人は、与えられた条件の下で生きている。好きな場所に暮らし、好きなものを食べて、好きな場所に好きな時に行けても、「生物学的な条件」は超えられない。今回の体験で「自然に生かされている」ことを痛感したし、与えられたものを生かして生きていくしかない、とも強く思わされたのである。

そういった意味で、ある意味、体を張って学びと経験を得た気がしている。

繰り返しになるが、長期間どうしても子どもが欲しいという思いで不妊治療を継続されている人にとっては、私の卵子凍結に対する感想は、不遜な感慨であるかもしれないと思う。だが、「子どもを持たない」選択肢を積極的には取ってこなかったが、結果的に現在子どもを持っておらず、しかも卵子凍結に興味がある女性たちに。(高齢とされる年齢で)実際に凍結をやってみた筆者の体験が、少しでも参考になればと願っている。


前編はこちら>>>医師には反対されても。40代後半で挑んだ卵子凍結を克明ルポ



高以良潤子◎ライター、ジャーナリスト、インストラクショナルデザイナー。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、インストラクショナルデザイナーを務めたのち、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系IT企業勤務。

文=高以良潤子 編集=石井節子

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