本展覧会の見どころ、また、今開催することの狙いとは。ニューヨークを拠点とするアーティスト、澁谷 翔も登壇した6月10日のトークセッションの様子と合わせて紹介する。
日本で初めてカルティエのブティックがオープンしたのは、1974年。場所は原宿のパレ・フランスだった。それから50年。半世紀という節目を記念して開催する本展では、左右対称の構造をなす表慶館を舞台に、カルティエと日本、そして、カルティエ現代美術財団と日本のアーティストというふたつの絆が表現される。
表慶館右側の展示室では、日本美術のコレクターでもあった3代目ルイ・カルティエの時代から現代に至るまで、カルティエが日本の文化、美術と共鳴してきたことが伝わる120点の「カルティエコレクション(メゾンのヘリテージコレクション)」とプライベートコレクション作品を中心に紹介される。
左側の展示室に並ぶのは、カルティエ現代美術財団が所蔵、展示してきた現代美術作品の数々だ。16名の国内外アーティストの作品が150点以上展示される。
ひとつの展覧会で初めて一堂に会する、メゾン カルティエとカルティエ現代美術財団のコレクション。その並行するふたつの歴史を結ぶように、館内中央に、澁谷翔によるインスタレーション「日本五十空景」が展示される。カルティエから本企画の相談を受けた澁谷は、35日間にわたり日本全国を旅し、絵画 50点の連作を制作した。
「現代版の浮世絵」が生まれた背景
6月10日、展覧会に先駆けて開催されたトークセッションでは、カルティエ現代美術財団インターナショナル ディレクターのエルベ・シャンデス、カルティエ ジャパン カルチュラル シニアアドバイザーのエレーヌ・ケルマシュテールとともに澁谷も登壇。冒頭でシャンデスは、カルティエ美術財団と日本人のアーティストの関係をこう語った。「カルティエ財団は、企業による文化財団のパイオニアです。財団の存在意義は、アーティスト、サイエンティスト、デザイナー、建築家と出会い、彼らとその作品を社会とつなぐこと。彼らと直接対話を重ね、文化にコミットし続けることです。
様々な日本人アーティストとのつながりをもつなかで、今回光があったのが、澁谷翔でした。カルティエ財団が設立された1984年は、彼の生まれた年でもあります。ともに40歳を迎えたこの年にスペシャルなプロジェクトをできたことをとても嬉しく思います」
財団と澁谷の関係は2020年の冬、澁谷へインスタグラム経由で連絡をとり、財団のスタッフが澁谷を訪問したところから始まったという。