WOMEN

2024.07.10 15:15

医師にはシブられても。40代後半で挑んだ卵子凍結を克明ルポ

診療を受けたクリニックで。 個室待合室のリクライニング機能付き椅子(左), Getty Images

外資系数社を中心に昨今、不妊治療の費用を一定の上限まで拠出してくれる福利制度を設ける企業がある。以下は、この制度をきっかけに卵子凍結にふみきった外資系企業勤務、東京在住の40代後半の女性によるルポルタージュである。

40代後半の女性が不妊治療を行う場合、保険の適用外であるという事実がある。40代で不妊治療を行う女性は少なくなく、支援団体は年齢制限の見直しを要望してきた。だが、2024年1月、日本政府は、不妊治療に公的医療保険を適用する条件としている女性の年齢制限を見直さないという方針を固めた(参考)。治療開始時点で「43歳未満」であることが医療保険適用の条件となる。43歳以上の女性が卵子凍結などの不妊治療を行いたい場合は、全額自費負担だ。

参考>> 医師にシブられても。40代後半で挑んだ卵子凍結を克明ルポ



「断られた」卵子凍結

「年齢が高い場合、正直おすすめしません。凍結しなかったとしても、後悔はしないと思いますよ」

それまで非常に感じがよく穏やかだった婦人科の医師が、いちどきに厳しい顔になり、卵子凍結は(40代後半・独身の)筆者には勧めない、という方針を告げた。生理が終わった後には物理的に卵子凍結の選択肢もなくなるので、凍結しなかった場合、10年後の自分が振り返ると後悔するのではないか、という質問に対してのコメントだった。

年齢はあくまで数字、などと強がっているつもりはないが、日常において自分の年齢を毎日のように認識させられる機会はあまりなかった。外資系企業に勤めていると面接の際に提出するレジュメにも年齢は書いていないし、仕事仲間から年齢を聞かれることも、ここ何年か、ほぼなかった。

そんな私が、まず行きつけの婦人科にやんわりと、しかし確固として、年齢を理由に、卵子凍結を断られた。不妊治療のサポートサービス経由でカウンセリングを受け、推奨の病院リスト(居住地である東京から通えるところ)を出してもらったが、その際にももちろん年齢が重要なファクターとなった。さらに、不妊治療を経て出産したという現在50代の行きつけの鍼灸師にもアドバイスをもらい──と、比較的長いプロセスを経て不妊治療で有名な産婦人科に足を踏み入れた。

このように私を駆り立てたものは、何か。どうしても子どもが欲しいからか、というと、そうではない(欲しくないとも思ってはいないが)。大きな後押しとなったのは、現在の勤め先が不妊治療に対して手当を出していることを入社時に知ったからだ。しかもその額、上限約四百万円(従業員1人あたりの総額)。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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