そこでいちかばちか、近くを飛んでいたドローン(無人機)に合図を送った。ウクライナ側のドローンかロシア側のドローンかはわからなかったが、味方のドローンなら救難チームに至急連絡してくれるはずだ。それに賭けた。
賭けは成功した。ドミトロが所属するウクライナ軍第47独立機械化旅団はテレグラムのチャンネルで、彼の過酷な体験を動画と文章で紹介している。本人も登場する動画は、エストニアのアナリスト、War Translatedが英語の字幕をつけてX(旧ツイッター)で共有してくれている。
A wounded Ukrainian soldier from the 47th brigade saved his life by showing his military ID to a Ukrainian drone. Within an hour, a Bradley vehicle arrived and successfully evacuated him.https://t.co/VazR8GNqlq pic.twitter.com/z0MVSoGbYt
— WarTranslated (Dmitri) (@wartranslated) June 9, 2024
仲間の兵士たちがどうなったのかは不明だ。ドミトロはひとり、血を流しながら樹林帯まで這っていき、自分で応急処置をした。しかし包帯や止血帯は、避けられないことを少しばかり遅らせるだけだった。「必死でした。だから、奇跡が起きて、見つけてもらうことに望みをかけたんです」
ロシアがウクライナで拡大して2年4カ月たつ戦争のほかの戦場と同じように、ドミトロが死に向かいつつ横たわっていた場所の上空にもドローンが飛び交っていた。「奇跡が起きました」と彼は話す。「1機のドローンが近づいてきたんです」
とはいえ、それが味方のドローンだと確かめるすべはなかった。もし近づいてきたのがロシア側の監視ドローンなら、自分の隠れている場所を教えればその操縦士からの要求で自爆型のFPV(一人称視点)ドローン、もしくは砲弾が飛んでくるおそれがあった。