経営・戦略

2024.06.25 08:00

「実店舗の死」は本当か、資産として生かせる企業と生かせない企業

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日ごろから報道をチェックしている人ならおそらく、実店舗の小売りが回復してきたというニュースをあちこちで見聞きしているだろう。米紙ニューヨーク・タイムズも今月10日にショッピングモールの復活を歓迎する記事を掲載したばかりだ。

ただし、問題が一つある。実店舗がここに来て急に復活を遂げたと思っているなら、ほぼ3年間、現実にまったく目を向けてこなかったことを意味する。

多くの人がよく覚えているように、コロナ禍のさなかには多数の小売店が何週間にもわたって一時休業を余儀なくされた。また、大半の店舗が営業を再開してからも、消費者が再び買い物に出かけるようになるまでには時間がかかった。とはいえ、事実とは確固たるものだ。データが示しているように、実店舗はある程度姿を消したが、そのほとんどはかなり速やかに復活し、一気に勢いを増すことも少なくなかった。

市場調査会社eMarketer(イーマーケター)のデータが示している通り、総合的に見ると2020年に米国で実店舗の売上がやや落ち込んだのは事実だ。しかし、2021年には力強く回復し、2019年の水準を大幅に超えた。2022年にも実店舗の売上は全般的に伸び、2020年を15%以上も上回った。

別の角度から見てみよう。来店者数を示す多くの指標は、2021年末にコロナ禍前の水準まで回復した。さらに、コロナ禍が終わってからずっと多くの小売業では出店が好調で、2022年と2023年はともに出店総数が閉店数を上回った。

誤解のないように言うと、小売業に伴うさまざまな側面と同様に、二分化傾向は引き続きみられる。例えば、高級店のテナントが多い、いわゆる「Aクラス」のショッピングモールは業績が好調だ。一方、ローエンドのショッピングモールは、その多くが長く苦戦している。

また、大半のブランドの郊外店は通常、都市部の店舗と比べて業績が有意に上回っている。コロナ禍前からすでにみられたパターンだが、閉店と倒産が集中しているのは「平凡な中流」から抜け出せない小売店だ。一方、独自性があり、顧客に非常に合ったバリュープロポジション(価値提案)を提供している小売店は、出店を続け、売上を堅調に伸ばしている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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