経営・戦略

2024.06.25 08:00

「実店舗の死」は本当か、資産として生かせる企業と生かせない企業

こうした現象は新しいものではない。信頼できない情報に耳を傾けず、気をつけて注視していればはっきりわかることだ。

独自性にすぐれた小売事業者に、実店舗は復活したかと尋ねてみてほしい。圧倒的多数から、実店舗はほんの少しのあいだ不活発になっていたにすぎない、という答えが返ってくるだろう。

オンライン売上を促進する上で実店舗が果たす役割が重視され、拡大している点も、忘れてはならない。オンラインの成長は、実店舗の成長を着実に上回っており、それは今後も続くだろう。実店舗はオンライン需要を促進している。さらに、店舗からの直接発送、近距離配送、あるいは、クリック&コレクト(オンラインで注文した商品を店舗で受け取る方式)を利用する買い物客の注文を処理する上で、実店舗はしばしば極めて重要だ。

スーパーマーケットのウォルマートやターゲット、ベストバイなどはコロナ禍以前から、実店舗を資産とみなして投資を増やしていた。複数チャネルをまたぎ、かつ統一感のあるハイブリッドな買い物体験を提供するために活用すべき資産である。

その一方で、「リテール・アポカリプス」(オンライン小売に押されて実店舗が没落する「小売店の黙示録」)というナンセンスな理論に踊らされ、時計の針を巻き戻すように実店舗を生かす努力を自制してしまった競合他社も非常に多かった。

ここでの教訓は、「実店舗の死」という話は依然として、ひどく誇張されているということだ。筆者はこうした問題について10年近く前から訴えており、初の自著『Remarkable Retail: How to Win and Keep Customers in the Age of Disruption(注目すべき小売店:混乱する時代に顧客を獲得・維持するには)』(未邦訳)でも論じている。

実店舗は確かに変わったし、今後もオンライン販売にシェアを奪われ続けるだろう。しかし、決して死んだわけではない。この事実を無視すると、ビジネスの存亡に関わるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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