欧州

2024.06.21 09:30

自爆ドローンによる損害増えるロシア軍、一因は「お粗末な電波妨害装置」

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ロシアがウクライナで拡大した戦争の装備の損害を独自に集計しているOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリスト、アンドルー・パーペチュアによると、18日に確認した分ではロシア軍の装備の損害(撃破、損傷、遺棄、鹵獲)数がおよそ110にのぼった。ウクライナ軍の損害数は25ほどにとどまっている。
パーペチュアは、1日に集計したロシア軍の装備の損害数としてこれが過去最多かどうかは「記憶が定かでないが、それに近いものだ」とコメントしている。おそらく、双方の損害数の差としても過去最大に近いものだろう。

パーペチュアは各損害について、わかるものについては損害を与えた兵器もリストに付記している。それによれば、この日の集計分でロシア軍の装備を圧倒的に最も多くつぶしたのは自爆型のFPV(一人称視点)ドローン(無人機)だった。ロシア軍の80ほどの装備が、月に10万機あまり投入されている500ドル(約7万9000円)程度のウクライナ軍のFPVドローンによって損害を受けた。

ロシア軍はウクライナ軍のドローン攻撃を阻止できていないようだ。ロシアの軍事ブロガーによる最近の暴露記事からその理由がうかがえる。ロシアの産業界はドローンと操縦士間の通信を遮断するさまざまなジャマー(電波妨害装置)を製造しているが、その多くが実際は機能していないようなのだ。

このブロガーは、Telegram(テレグラム)の人気チャンネルで売り込まれている2400ドル(約38万円)ほどのジャマーについて、役に立たないどころか有害だと怒りの告発をした。このジャマーは前線部隊に信頼できるものという間違った認識を与え、結果として兵士たちを死亡させているという。「誤った希望を抱いてどれほど多くの兵士が命を落とすことになったのか、想像するだけでぞっとする」とブロガーはつづっている。

このブロガーが分解調査した多周波ジャマーは、2年4カ月におよぶ現在の戦争の前線でロシア軍が用いた対ドローンジャマーで、有効性が低いことがわかったものとしては最初のものではない。ウクライナ軍のある旅団は今年4月上旬、3夜にわたる大胆な作戦を敢行し、新たなジャマーを装着したロシア軍の遺棄された戦車を鹵獲した。このジャマーもあまり役に立っていなかったとみられている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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