欧州

2024.06.21 09:30

自爆ドローンによる損害増えるロシア軍、一因は「お粗末な電波妨害装置」

しかし、今回のジャマーはロシア軍の低品質のジャマーのなかでも最悪レベルの出来だったのかもしれない。ブロガーは「山のような技術的な過失」を明らかにしているほか、重量や大きさ、さらに「持ち上げようとすると壊れる持ち手」もやり玉にあげている。

技術的な過失の一例は、アンテナの不適切な向きや取り付け方だ。適切につくられたジャマーでは、妨害信号によってドローンの無線リンクを広範囲で無効化するために、アンテナは適切な形状と大きさのものが選ばれ、適切な方向に向けて取り付けられている。

このジャマーも複数の無線エミッターを備え、それぞれ特定の種類のドローン(低空飛行するFPVドローンや、より高い高度を飛行する監視ドローン)の通信に使われる周波数帯に調整されていた。

問題は、FPVドローンは横から攻撃してくることが多いにもかかわらず、このジャマーではFPVドローン用アンテナの多くが上を向いていたことだった。しかも、上向きのアンテナのうち1本は、「真上に強力なビームでも放とう」とでもいうのか、固定されていて、調節すらできなかったという。

この固定アンテナが役に立つとすれば、敵のドローン操縦士が、ジャマーの真上の狭いゾーンで慎重にドローンを飛ばさざるを得ない場合だけだろう。

また、ジャマーは大量の熱を発生するので、設計者はさまざまな冷却システムに細心の注意を払うのが普通だが、このジャマーの設計者にそうした配慮はみられなかった。主な冷却装置は、プラスチックケースの内側にボルトで固定された簡素なファンだけだった。

さらにひどいのは、ファンが空気を取り込む吸気口や、熱くなった空気を排出する排気口がついていないことだった。そのため、起動するとジャマーはすぐに「溶鉱炉」のような状態になっていた。触れないほど熱くなるので、部品は劣化してしまう。ただでさえ効果が低いのに、熱を帯びると効果はますます低くなる。

ブロガーは、このジャマーを喧伝しているロシアのインフルエンサーたちは「自分のカネのためにわが軍の兵士たちを殺している」と指弾し、ウクライナ側のドローン操縦士に「『奇跡』のような代物の上に(ドローンを)飛ばされ、嘲笑されている」と憤っている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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