30U30

2024.06.26 13:30

「NEOかわいい」は進化する。CHAI解散後、今のムードは「他者への愛」

Forbes JAPAN 2024年8月号は10周年特別記念号だ。

今号では、次の10年を見据えた特集テーマに「THE NEXT IMPACT THING」を掲げた。大転換期を迎える日本経済に「次のインパクト」をもたらすのは、間違いなく次世代の人々が持つ起業家精神だ。『Forbes JAPAN』では、これからも物事をまるで違う目で見る人たちの壮大なビジョンと挑戦に敬意を払い、世界を変える人々の姿を伝え続けたい。


セルフラブのメッセージを発信し、世界中のリスナーを勇気づけてきたCHAIは、2024年3月をもって解散し、5月には新たにマナ、カナがユニットとしての活動を始めた。世界を変え、次世代に希望を与えたふたりが今、伝えたいこととは。


2018年の「Forbes JAPAN 30 UNDER30」に選出され、24年3月に解散した4人組“ニュー・エキサイト・オンナバンド”、CHAI。双子のマナとカナのコーラスワーク、4人のパワフルな演奏、鮮烈なファッション、そして「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」といったコンセプトとともに伝えられるセルフラブの肯定的なメッセージは、日本のみならず世界中に衝撃と喜びを与えた。

結成から約14年のあいだに、GorillazやDuran Duranなど世界的アーティストとコラボレーションを実現。さらには世界各国の大型音楽フェスへの参加、アメリカの公共放送・NPR主宰の「Tiny Desk Concert」への出演など、日本人アーティストにとって前人未踏の地を切り開いてきた。その姿は今も、次世代の日本人アーティストたちに大きな希望を与えている。そんなCHAIの解散発表は、国内のみならず世界中のメディアで報じられた。

「やりきった」と思えた

「30 UNDER 30」に選出された2018年について、マナとカナが振り返る。

「とがってた〜(笑)。こんなにいい音楽があるんだから聴けよと思ってた。音楽で怒りやストレスを表現したいとは思わなかったけど、それが原動力だった」(カナ)

「口を開けば愚痴、という時期(笑)。それを4人で共有して音楽をやれていたことが強かったんじゃないかな。信念にあるものは怒りだったけど、それを笑い飛ばそうという思いでポップな音楽に変えることができていたと思う」(マナ)

ラストライブの最後に演奏された──つまり、CHAIとして最後に届けられた──“N.E.O.”は、世の中に対する怒りとストレスに満ちていた時期に生まれた楽曲だ。月日を追うごとにリスナーの反響は大きくなり、最終的には自ら「CHAIの代表曲」と堂々と呼べるほど絶大な称賛と共感を得た曲となった。今でこそ国内でも感情をむき出しにしたエンパワーメントソングを届ける女性アーティストが増えているが、CHAIはその先駆者だった。
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文=矢島由佳子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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