ライフスタイル

2024.07.05 14:15

イタリアのセレブに「足袋」が人気絶頂、彼らはなぜ足指を隠すのか

しかしあるとき、フランスのイヴ・サン・ローランが、その労働者の履物を、裸足でバカンスのビーチを歩ける靴に変えたのだ。女性たちの憧れであるココ・シャネルや、グレース・ケリーが、ビーチの砂のうえを歩く。

そしてかつては土と肥料の汚泥だらけだった農作業靴は、時代を経て、キャサリン妃が公務で履くまでになっていく。ドレスコードは“水着からフォーマルウェア”まで。こんな特異なファッションアイテムはほかにない。

イタリアの男は「深夜の寝室に入るまで」靴を脱がない

エスパドリーユのほとんどは、貧困国であるバングラディシュで、二束三文で生産されている。つまりこの麻と木綿の靴は、高級ブランドを儲けさせる、いまもっとも利回りのいい靴なのだ。世界中のビジネスマンがカジュアルウェアへと舵を切り、数万円もするエスパドリーユの高級品はいま当たり前になっている。

ミラノの男たちは、そんな「エスパドリーユ」を履いて仕事に行く。足の指を隠し、涼し気に。靴下を履く場合は、外から1ミリもそれを見せない。裸足の風通しの良さを“演出”することで、蒸し暑い夏であっても、独特の清潔感を醸し出すことができるからだ。

でもなぜいま、足袋や、エスパドリーユなのだろう?

理由はさまざまだが、ひとつには、イタリアの男たちは、年齢を重ねるほど、家で靴を脱がないということにある。深夜の寝室に入って、靴を脱ぐまで、裸足のつま先を隠し通す。イタリア人の頭のなかでは、見せたい自分とそうではない部分がわりと明確なのだ。足の指というのは、あまり女性に見せたい自分じゃないのだろう。

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