三菱鉛筆を2020年に41歳で承継した6代目・数原滋彦社長は、先代の父から「会社は数原家のものじゃない。お前が社長になれると思うなよ」と言われていました。しかし、2022年度は過去最高売り上げを達成し、23年は2年連続で更新しました。同年3月に独高級筆記具の「LAMY」を連結子会社化するなど、手腕を発揮しています。どのように会社を継いだのでしょうか。
事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」から紹介しよう。(転載元の記事はこちら)
「uni」はどうしてあの色?
「私たちが名刺を渡すと、ほとんどの人が『持ってますよ』『使ってました』って言ってくれるんですね」。数原氏が言うように、鉛筆「uni」を見たことがない人は珍しいでしょう。この鉛筆が生まれたのは、1958年。当時、「世界に負けない鉛筆を」というコンセプトで開発されました。色の候補は、紫色など多数あったといいます。
「絶対に物まねと言われないよう」に、誰も使ったことがない色を探究した結果、日本の伝統色であるえび茶色と高級感のあるワインレッドを掛け合わせた「uni(ユニ)色」と呼ばれるカラーが選ばれたといいます。
元々、三菱鉛筆のルーツは1887年創業の眞崎鉛筆製造所です。眞崎鉛筆が手がけた鉛筆は、品質の高さから逓信省で使われることになりました。このとき、眞崎家の家紋が「三鱗(みつうろこ)」だったため、三菱鉛筆のロゴに採用されました。あの三菱グループとは全く関係ありません。
ロングセラーの秘訣は、研究開発に投資する伝統
三菱鉛筆は、鉛筆の他にボールペン「ジェットストリーム」、サインペン「ポスカ」など多数のロングセラーを持っています。ヒット商品には、役員が「売れない」と批判したものも多いですが、現場や開発陣の緻密な研究やマーケット分析などで、役員の苦言を乗り越えられる文化があるといいます。
なぜ、こうしたロングセラーを生み出せるのでしょうか。数原氏は「うちは、意識的に研究開発への投資をしています」と語ります。決まったルールはないですが、毎年、売上高の5%程度を研究開発費に充てているといいます。
三菱鉛筆は、先々代の祖父、先代の父も、研究開発を重視してきました。こうした伝統は今も引き継がれています。