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2024.06.24 09:15

三菱鉛筆6代目社長の「奉仕するリーダーシップ」 2年連続で過去最高益を達成

海外への輸出も伸ばしています。三菱鉛筆の売上げの半分以上は海外で、グローバル企業へと変貌を遂げつつあります。海外シェア最大はアジアで、単一国ではアメリカがトップ、伸び率ではヨーロッパが非常に高いといいます。

数原氏は、「2022年、はじめて海外の売上げが国内を越えました。もちろん、為替の影響も大きいが、これは今後の戦略としても大きな意味をもつ」と期待を込めます。

すべての人の「ユニーク」をサポートする

三菱鉛筆は、2022年2月、創業150年にあたる2036年を目標とした「ありたい姿2036(長期ビジョン)」を発表し、それに向けたコーポレートブランドコンセプト(企業理念)を「違いが、美しい。」を掲げました。

理念策定にあたり、「書く・描く」という筆記用具のドメイン(※領域)から外に出なければならないという前提で、筆記具の存在意義を社内で議論しました。「同じ文字を100回書けば100通りの表現ができる」。書くということは個性の表現であり、自社製品が「表現することに貢献してきた」ことに、数原氏は気付かされたといいます。

また、「生まれながらにすべての人はユニークだ」という考えに基づき、企業価値を「書く・描く」を通じて多くの人の「ユニーク」な表現を応援することだと再定義しました。

今、三菱鉛筆は、筆記具メーカーの枠を超え、一人ひとりの「違い」を美しく表現することをサポートする「世界一の表現革新カンパニー」を目指しています。それは、数原氏の「支える」サーバンド型リーダーシップにも通じています。

全員で北極星を目指して


長期ビジョンで目指す売り上げは、現在の約2倍の1500 億円。数原氏は、強気な目標の背景に前社長が残した経営基盤を挙げます。「父が素晴らしい社員と商品、バランスシートを残してくれた。ありがたく受け取り、変えていくところは変えていく」。そして、数原氏は、「北極星」という言葉を使い、会社の将来像を語ります。

「会社の未来は私がつくるのではなく、社員と一緒につくっていくもの。北極星という目標を設定し、それを目指して社員みんながいろいろな道を考えてくれる。コロナ禍でも、苦しい山を社員みんなが苦労して登ってくれたと思う」

そして、父でもある前社長について「山の登り方を示してくれた。戦略を非常に精緻にプランニングする」と振り返ります。ただ、山の登り方はひとつではありません。この変化の激しい環境において、山登りの難易度は高まっており、トップダウンでいけば、山登りのスピードは、トップの能力や指示の範囲に収まってしまいます。

数原氏は「社員一人ひとりの力を信頼する。それぞれが何をしているか細かく 把握しなくとも、社員みんなが力をだし、すごい勢いで走っている。それが遠心力となり、売上げに結びついている」とし、全社員が北極星という目標に向かって行動できていると手応えを語ります。

数原氏が目指すのは、これから100年、150年、300年と三菱鉛筆を永続的に続けていくこと。「自分は300 年生きられるわけではない。その間のバトンゾーンとして、『未来のために、今、何ができるか』を考えていかなければならない」と見据えています。


三菱鉛筆◎1887年(明治20年)創業。1901年、逓信省(現 総務省)へ初めての国産鉛筆(局用1号・2号・3号)を納入。1958年、高級鉛筆「ユニ」(当初4H~4B)発売。2020 年に数原滋彦氏が6代目代表取締役社長に就任。第32回日本文具大賞2023にて「uni 詰替用」がグランプリを、ほか3商品で2023年度グッドデザイン賞を受賞するなど、受賞歴多数。

(本記事は、事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」の記事1記事2記事3を編集しています。)

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