欧州

2024.06.20 10:00

ボウチャンシク攻防戦、ロシア軍歩兵の犠牲膨大に 装甲車両与えられず

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ロシア軍がウクライナ北東部での攻勢を始めて5週間あまりたつなか、戦闘の中心地になっている国境近くの小さな都市、ボウチャンシクの市内や周辺はロシア軍の装甲車両にとってきわめて危険な場所になっている。

そのためロシア軍の歩兵は徒歩で戦闘に赴いている。しかし、彼らもまたウクライナ側のドローン(無人機)や大砲に狙われ、大勢が死亡している。

この春から夏にかけて、ロシア軍の死傷率が上昇したのは理由のないことではない。ロシアが2022年2月にウクライナで拡大した戦争で、ロシア軍の累計の死傷者は50万人を超えた可能性がある。ウクライナ軍の死傷者ははるかに少ない。

だが、これほど多くの血が流されても、戦争が近く終わる気配はない。ロシアは毎月、およそ3万人の新兵を集め、短期間、雑な訓練を施してはウクライナに送り出している。これは、毎月の人的損失をどうにか補えるくらいの数だ。

そのため、ボウチャンシクやウクライナのほかの戦場で途方もない数の死者を出しながら、ロシア軍は引き続き既存の部隊を補充し、さらに新しい部隊を編成すらしている。「ロシアは今後の前進に向けて新たな兵力を準備している」。ボウチャンシクで戦っているウクライナ軍の第82独立空中強襲旅団を支援している海兵隊所属のドローン操縦士、Kriegsforscher(クリークスフォルシャー)はX(旧ツイッター)のスレッドでそう指摘している。

ロシア軍は5月10日、ウクライナ北東部の国境沿いの複数地点を同時に攻撃し、新たな攻勢を始めた。国境からわずか6.5kmほどに位置するボウチャンシクは、この攻勢で最初の大きな目標となった都市だ。だが、総勢数万人規模のロシア軍はこの工業都市を越えて先に進むことができなかった。

ウクライナ側はロシア軍の侵入部隊を撃退するため、第82旅団をはじめとする数個旅団を北へ急派した。米国製の弾薬などを補給したこれらの部隊は、通り1本ごと、建物1棟ごとの戦闘をロシア軍部隊と繰り広げた末、5月下旬にロシア軍の進撃を食い止めた。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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