欧州

2024.06.20 10:00

ボウチャンシク攻防戦、ロシア軍歩兵の犠牲膨大に 装甲車両与えられず

ロシア軍にとっての問題は、ロシアの産業界が新規生産あるいは長期保管施設から再生できるAPCとIFVは年間1000両かそこらにとどまるとみられることだ。現在の損失ペースなら必要数の3分の1〜4分の1程度しか補えていないことになる。

ロシア軍の指揮官に、重量級の装甲車両の温存を求める圧力が強まっているのは明らかだ。ロシア軍の突撃部隊は、ゴルフカートをいくらか頑丈にした程度の全地形対応車(ATV)や、オートバイに乗ることが多くなっている。もっとも、こうした軽量車両を使う部隊ですら、車両がまったくない部隊に比べればまだ恵まれているほうだと言えるかもしれない。

支援部隊も、カマズ軍用トラックのような重量級車両の使用を控え、代わりにATVを用いるようになっている。エストニアのアナリスト、War Translatedが共有・翻訳している動画で、あるロシア兵は「戦闘ではカマズトラックで輸送するのは不可能だ。ほかの車両と同じようにね」と語っている。

言うまでもなく、ATVも攻撃に弱い。このロシア兵は動画のなかで、炸裂破片であちこちに穴が空いたATVを紹介している。車両はウクライナ側の攻撃を受け、乗っていた将校3人が死亡したという。だが、ロシア軍の指揮官の多くは、10万ドル(約1580万円)ほどするカマズや数百万ドルのAPCやIFVを失うよりは、1万9000ドル(約300万円)程度のATVを失うほうがましだと考えているのだろう。

彼らはまた、車両がますます減る一方、歩兵には困らないという状況が続く限り、車両を失うよりは歩兵分隊を失うほうがましだと判断しているのだろう。

ロシア軍が先週末にボウチャンシク中心部で行った攻撃の結果、歩兵400人が骨材工場で包囲され、ウクライナ空軍の爆撃を受けることになったのも、こうした重車両不足が関係しているのかもしれない。

「ロシア兵はここで包囲されている。撤退できる見込みもなければ増援が来る見込みもない」とウクライナ軍のあるドローン操縦士は述べている。ボウチャンシクにいるロシア軍は、部隊が孤立している工場まで突破する装甲車両がないのかもしれない。あるいは、装甲車両はあっても、それを数百人の兵士を救出するためだけに危険にさらす気はないのかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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