欧州

2024.06.20 10:00

ボウチャンシク攻防戦、ロシア軍歩兵の犠牲膨大に 装甲車両与えられず

現在、ボウチャンシクは歩兵が大量に殺戮される「キリング・フィールド」になっている。死者のほとんどはロシア兵だ。Kriegsforscherは「ロシア軍は装甲車両を使わず、歩兵だけを投入している」と報告している。

ロシア軍にも、第82旅団の米国製ストライカー装輪装甲車のように、混沌とした市街戦に向いた車両がないわけではない。たとえばBTR-82装甲兵員輸送車は、ストライカーほどは洗練されておらず、装軌車両という違いもあるとはいえ、大まかに言えばストライカーに似た車両だ。

Kriegsforscherは、ロシア軍部隊は「市街地で戦うのに(少なくとも後送用途では)最適な装甲車両を持っているにもかかわらず、それを使っていない」と説明し、「装甲車両なしで歩兵を使うというロシア側の選択は奇妙だ」とも書いている。

とはいえ、ロシア軍の指揮官が兵士の命を軽視しがちなことを考えれば、この選択はむしろ理にかなっていると言えるだろう。

オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「Oryx(オリックス)」で確認されているだけで、ロシア軍はこれまでに、兵士を戦場に運ぶ2種類の装甲車両である装甲兵員輸送車(APC)と歩兵戦闘車両(IFV)を4400両近く撃破されている(編集注:Oryxの分類で、MT-LB装甲牽引車などが含まれる「装甲戦闘車両」分も算入)。毎月平均160両ほど撃破されている計算だ。

これに対してウクライナ軍のAPCとIFVの撃破された数は計1300両弱にとどまっている。月あたりでは45両ほどだ。

ロシア軍の車両の損失は急速に拡大している。米国から砲弾が再び届くようになり、国内で自爆型のFPV(一人称視点)ドローンの調達も増やしているウクライナ軍はようやく、監視ドローンによって発見されたすべての車両を攻撃するのに必要な火力を手に入れた。発見しても攻撃する手段がないことも多かった数カ月前とは大違いだ。

この戦争での装備の損害を独自に集計しているOSINTアナリストのアンドルー・パーペチュアによると、4月に撃破が確認されたロシア軍のAPCとIFVは計288両に達した。パーペチュアは「これはあくまで、わたしたちが見て数えたものだけだ」とも強調している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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