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2024.06.26 16:00

レクサスが「ミラノデザインウィーク」にて、美しい体験を心に刻むインスタレーションを開催

会場の中央には、BEVのコンセプトモデル「LF-ZC」があり、その周囲に光のスカルプチャーが並ぶ。

ミラノデザインウィークでは、家具デザインだけでなく企業展示も話題。今年、レクサスは「Time」というインスタレーションを開催。体験と時間を一組の概念ととらえ、新たな体験創造を提供するというものだ。 


「技術だけで突き進んでしまうと、最後は便利になって終わりです。しかしレクサスが目指すのは、テクノロジーが人をサポートすることで、未来をもっとよくすること。今やテクノロジーは、AIによって人間より早いスピードで物事ができる。しかし本来はインタラクティブ(双方向)な関係でなければいけない。ハードウェアとソフトウェアが交じることで、心が豊かに、そして感情的なものになるのです」と、レクサスインターナショナル レクサスデザイン部 部長の須賀厚一は語る。

レクサスは新しい体験を提供することを追求している。だからミラノデザインウィークは、レクサスにとっても特別な場所になる。インスタレーションの会場となるのは、ミラノの中心部からやや離れたトルトーナ地区にある大規模展示場スーパースタジオ。レクサスでは屋内にて「BEYOND THE HORIZON」、屋外で「8分20秒」という2つの展示を行う。

暗い展示会場に入ると、美しい水平線が浮かび上がる。中央にはレクサスの次世代バッテリーEVコンセプトモデル「LF-ZC」があり、その左右には等身大のスカルプチャーがずらりと並んでいる。

このインスタレーションを手がけたのは、デザイナーの吉本英樹。彼は2013年の第1回LEXUS DESIGN AWARDの受賞者でもある。

巨大なスクリーンに映し出される水平線の情景は、時間の経過とともに変化する。

巨大なスクリーンに映し出される水平線の情景は、時間の経過とともに変化する。

「BEYOND THE HORIZON、すなわち水平線の向こう側には、普通なら海があって、ぐるりと回ってまた陸地がある。しかしその水平線を接線の方向に直進したら、宇宙につながると考えてみた。水平線はとても美しく、そこに佇み、心に訴える。そんな人間の原点に返るような優しさがあります。

しかしその一方で壮大な可能性や奥深さもある。さまざまなかたちで自動車の未来が語られるなかで、レクサスの“次に行くんだ”という強いステイトメントを表現したかった。人が進化するように自動車も進化し、その人だけの自動車が完成するという“Software-defined vehicles”の考え方や、個々のユーザーに合わせた体験や経験を提供するレクサスの“Making Luxury Personal”の考えを表現するために、レクサスLF-ZCを抽象化した化身としてスカルプチャーをつくりました。

人がその前に立つとセンサーが反応して越前和紙に光が走り、和紙の柄が浮かび上がります」と、多くの来場者でにぎわう会場を巡りながら吉本は説明する。

スカルプチャーの発光は一定ではなく、さらに幅30m、高さ4mのスクリーンが映し出す水平線は、日の出から日没へと空の色を変化させる。つまりこの空間の姿は、すべてが一期一会の組み合わせ。それこそが人によって異なる体験へとつながっていく。

このインスタレーションでは、越前和紙や竹といった日本の素材を取り入れた。クラフト×テクノロジーは彼の研究分野のひとつだが、どのような意図があるのだろうか?

「スクリーンやスカルプチャーなどに、1500年も続く越前和紙を使いました。和紙は文化的なアイコンという枠にとどまらず、“職人の技”や“純粋なものづくりの価値”を表現しています。私は伝統工芸に興味があり、工房に見に行くことも好き。

伝統工芸は芸術の世界であり、日本には越前和紙のような財産がたくさんある。日本のブランドだからこそ、その財産を生かすべきだし、レクサスはクラフトマンシップへの敬意は深く、竹を内装材に選ぶなど日本で古くから使われる素材を尊重する姿勢もある。歴史ある素材や文化を大切にしつつ未来へと進むレクサスの姿勢が、最先端のインタラクションをうむのです」(吉本)

BEYOND THE HORIZONでは、会場に流れる音も、新しい体験へと誘う大切な要素となる。音楽を担当したのはAIを駆使した作品制作に積極的に取り組む音楽家、渋谷慶一郎だ。

渋谷は自身のサウンドインスタレーション作品「Abstract Music」を用いて、膨大なサウンドデータから生成された音像が空間を縦横無尽に動き回り、無限に変化する音響空間をつくり出す。同時に、スクリーンに映し出される光の変化に合わせて作曲された10分10秒の音楽が空間を満たしていく。その組み合わせは、偶然性と必然性を含む展開となっている。

「AIが日々の生活に入ることで、人は偶然性に慣れてきている。自分では予測しなかったようなサウンドだとしても、空間の中で聴けばまるで自然と同じように、それが心地よくさえ感じる。プログラムによって変化し続ける音楽というのは、自動車のBGMでは決して得られなかった過激な体験。こうした試みが、ものづくりの発展にもつながると良いと思います」と渋谷は語る。

来場者は美しい水平線と空が織りなす心地よい空間の中で、二度と同じ瞬間が訪れない音楽を聴き、スカルプチャーが表現する光を感じる。何が心に残るのか、それは個人にゆだねられた自由だが、その体験が唯一無二の時間となるのだ。

屋外エリアに展示された「8 Minutes and 20 Seconds」は、マーヤン・ファン・オーベルの作品。作品名は太陽から地球上へと光が届く時間を意味し、太陽光を利用した作品となっている。

屋外エリアに展示された「8分20秒」は、マーヤン・ファン・オーベルの作品。作品名は太陽から地球上へと光が届く時間を意味し、太陽光を利用した作品となっている。


会場となるスーパースタジオは、先鋭的な展示が行われる。

会場となるスーパースタジオは、先鋭的な展示が行われる。


左/吉本英樹◎Tangentチーフデザイナー。

左/吉本英樹◎Tangentチーフデザイナー。1985年、和歌山県生まれ。2010年、東京大学大学院修士課程修了。同年に渡英し、2016年、英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート博士課程修了。2015年にデザインエンジニアリングスタジオ「Tangent」設立。中/須賀厚一◎レクサスインターナショナル レクサスデザイン部 部長。右/渋谷慶一郎◎音楽家。1973年、東京都生まれ、東京藝術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベル ATAKを設立。作品は先鋭的な電子音楽作品から、ピアノソロ、オペラ、映画音楽まで多岐にわたる。


レクサス
https://lexus.jp/

Promoted by レクサス / photographs by Massi Ninni / report by Minako Shimada / text and edited by Tetsuo Shinoda