経済・社会

2024.06.25 08:00

カギは「脱ガラパゴス」次の10年で日本が返り咲くために

Forbes JAPAN Founder 高野 真

Forbes JAPAN 2024年8月号は10周年特別記念号だ。特集テーマは、「THE NEXT IMPACT THING 『次のインパクト』はこれだ」だ。私たちは2014年8月号(創刊号)で、「新旧融合」をテーマにした。ソニー元CEOの出井伸之と、スタートアップ経営者が表紙に登場。世代、そして大企業、スタートアップの「新結合」が日本経済を動かすというメッセージだ。

22年8・9月号のリニューアルでは、コロナ禍以降の新時代について、未来の理想を描き、社会実装する個人や組織の「新しいビジョン」が鍵を握るとした。

今号では、次の10年を見据えた特集テーマに「THE NEXT IMPACT THING」を掲げた。3号に共通するのは、「起業家精神」が生み出す価値へのポジティブな思いだ。大転換期を迎える日本経済に「次のインパクト」をもたらすのは、間違いなく次世代の人々が持つ起業家精神だ。『Forbes JAPAN』では、これからも物事をまるで違う目で見る人たちの壮大なビジョンと挑戦に敬意を払い、世界を変える人々の姿を伝え続けたい。

Forbes JAPANは創刊から10年を迎えた。この間、世界では新型コロナやロシア・ウクライナ戦争が発生し、国内では円安が進んだ。次の10年、日本はどう変化していくのか。



2014年6月に創刊したForbes JAPANは、丸10年を迎えた。当初は、明らかに縮小する出版業界にあって久々の経済誌創刊として注目されたものの、簡単な道のりではなかった。それでもこの10年間、ベンチャー投資家ランキング、地方の中小企業に焦点を充てたスモール・ジャイアンツ、30 Under 30 JAPANといった独自企画を打ち出し、企業とCEOを応援するメディアとして一定の評価を得たのではないか。Forbes JAPANを支えてくれたすべての方々への感謝の念に堪えない。

社会情勢に目を向けると、この10年、新型コロナの発生や米国トランプ政権の誕生とそれに伴う貿易戦争、英国のブレグジット、ロシア・ウクライナ戦争が起き、政治的リスクの高まりとサプライチェーンの変化をもたらした。テクノロジーの分野では、仮想通貨、自動運転技術、電気自動車、生成AIの誕生による自然言語処理などが過去にないスピードで発展してきた。

こういった変化をダイレクトに示したのが資本市場である。日米株価は大きなイベントごとに激しく上下変動したが、結局は素直に景気改善を受けて史上最高値を更新した。特に日本株はバブル期の株価を超えて4万円の大台に乗り、13年に80円台だったドル円レートは24年には倍近い160円に。米国の景気回復は長期化し、30年以上続いた日本のデフレからもようやく脱却しつつある。振り返ると、あらゆる問題が信じられないスピードで引き起こされた10年だった。

ではこれからの10年、世界のなかの日本はどうなるのだろうか? カギはデフレ脱却にある。日本の人口が2050年に9500万人と見通されるなか、潜在成長率の大幅な改善は望めない。したがって現在の150~160円のドル円レートは、日銀の金融政策により一時的に円高に触れたとしても大きなトレンド変更は考えづらい。であるならば、内外価格差の行方が今後の日本経済を左右すると言っても過言ではない。

米国のビッグマックの価格は1250円。日本の480円の2.5倍であり、ちょうど日米平均給与格差とほぼ同じである。これだけの価格差があって品質も良好となれば、現在の訪日客による賑わいや対日投資の増加はこの価格差が相当程度縮小するまで継続することになろう。
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文=高野 真

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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