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「周期」を生き抜く知恵と豊田章一郎の「ものすごい一言」 

「投資の巨人」ウォーレン・バフェットとジョージ・ソロスの薫陶を受けた阿部修平(投信投資顧問会社 スパークス・アセット・マネジメント株式会社代表)が、その哲学を語り尽くすシリーズ連載、第3回。今回は異常値の時代をブレずに生きる方法について。


藤吉:実は前回の対談(https://forbesjapan.com/articles/detail/71120)で阿部さんが仰った「周期」の話がずっと気になっているんです。

つまり、人間の経済活動の歴史を振り返ってみると、あるトレンドがずっと続くかのように見えても、一定の期間が経つと〝揺り戻し〟があって、反対のトレンドに入れ替わるという「周期」がある、というお話でしたよね。

阿部:そうですね。デフレにしても円高にしても株高にしても、永遠には続かない。ある周期をもって、逆の方向──インフレ、円安、株安──へと調整が働きます。

藤吉:当然、人間のマインドもそうした周期の影響を受ける、と。とりわけ面白かったのが、「ピーター・リンチ(アメリカの伝説的ファンドマネージャー。1980年代にフェデリティ・マゼランファンドを率いて29%の平均利回りをたたき出した)のおじいちゃんの世代は、みんな大損している」という阿部さんのご指摘でした。

阿部:米国野村証券の機関投資家のセールスマンとしてリンチのところに出入りしていたのは1980年代だったんですが、当時、よくそういう話を聞きました。

つまりリンチの祖父の世代は、第一次世界大戦後にアメリカが空前の好景気になった時代に〝イケイケドンドン〟で投資をやってかなり儲けた。けれど、最後はそのバブルが弾けて世界大恐慌に突入してしまい、「みんなやられた」って言うんですね。

藤吉:その祖父世代の反動で、リンチらの世代は企業のバランスシートをしっかりと精査して投資する「バリュー投資」へと傾倒していくんですよね。

実際にこの手堅い投資手法で、大恐慌後に割安のまま放置されていた優良株を拾って大儲けして、一気に〝スター・インベスター〟になっていく──「周期」の影響を受けて、世代ごとに人間の投資マインドが変化するのは面白いなぁ、と思ったんです。こういう視点って今まであまり言われてきてないですよね。

阿部:そうかもしれません。けれど身近なところでも、例えば僕の祖父の世代は戦争をど真ん中で経験しているけど、僕の親世代になると戦争の影は希薄になっていく。そういう社会的記憶は、やっぱり世代の人格形成に影響しますよね。
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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波をつかむ12の方法 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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