欧州

2024.06.18 12:00

「患者が廊下で死んでいく」 英医療崩壊の恐るべき実態

救急医療の遅れで年1万数千人死亡

救急医療の長い待ち時間は患者のアウトカム(臨床成果)の悪化と関連づけられている。

筆者がこのほど英国の医療専門誌「ヘルス・サービス・ジャーナル(HSJ)」向けに行った調査では、救急医療の遅れについて記述した検視報告書が昨年、2018年比で4倍に増えていることがわかった。

これらの報告書は、検視官が将来の死を防ぐためになんらかの対策が必要と判断した場合に公表される。救急医療危機が引き起こしている害を示すものとしては氷山の一角にすぎない。

英国の救急医でつくる職能団体「王立救急医師会(RCEM)」は、救急医療の遅れに関連した死は2023年におよそ1万4000件にのぼると推定している

政府に投資要望

英国では来月に総選挙が実施され、新たな政権を選ぶことになっている。いくつかの医療団体は、次の政権幹部たちは救急医療危機を優先課題のひとつにすべきだと訴えている。

RCNは担当相らに対して、廊下治療問題を追跡調査し、この問題について理解を深め、説明責任をもっとしっかり果たすよう要望している。

RCN会長のレンジャーはこう述べている。「患者がGP(一般開業医)の予約をとれず、地区看護師の訪問もソーシャルケア(社会福祉)のサービスも受けられないために、(病院の)救急外来部の扉をたたくということは、本来あってはならないことです。しかし、現実にはそうなっています」

そのうえで「廊下治療はわたしたちの病院の災難ですが、解決策はわかっています。わたしたちの保健医療システム全体と、そこで働く看護師たちに投資することです」と政府に行動を促している。

イングランドの国民保健サービス(NHS)加盟病院でつくる団体「NHSプロバイダーズ」のサフロン・コーデリー副会長も声明で、「第一線の看護師らが共有しているたいへん憂慮される経験は、より戦略的な投資と計画が緊急に求められていることをはっきり示しています」と述べ、次期政権にこう注文している。

「次の政権は、病院の過密状態をもたらしている根本原因に適切に対処することが不可欠です。また、病院から患者を安全かつ迅速に退院させ、最も必要な人たちのためにベッドを空けるには、ソーシャルケアと地域医療サービスを改善することも重要です」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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