ロッテグループ創業者の故辛格浩(シン・ギョクホ)の弟が設立した農心は先週、有価証券報告書で投資計画を明らかにした。同社の株価は、韓国の即席麺に対するうなぎのぼりの需要を背景に今年に入ってから約40%上昇している。
ライバル企業の株価も急上昇している。激辛麺の「ブルダック」を手がける三養食品(サムヤン・フーズ)は190%、オットギは25%近く上昇している。農心は三養食品に次ぐ韓国第2位の即席麺メーカーで、時価総額は3兆5000億ウォン(約4000億円)だ。
2023年に9億5240万ドル(約1500億円)だった韓国のラーメン輸出は今年、過去最高の10億ドル(約1580億円)に達すると予想されている。韓国関税庁によると、4月のラーメン輸出額は過去最高の1億860万ドル(約170億円)だった。
韓国料理を取り上げた韓国のテレビ番組や映画が人気となり、即席麺の需要に拍車がかかっている。例えば、2020年にアカデミー賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』では、家政婦が2種類の農心のラーメンを混ぜるシーンがあった。
農心の2023年の売上高は前年比8.7%増の2兆6000億ウォン(約2970億円)で過去最高となり、純利益は49%増の1150億ウォン(約130億円)とこちらも過去最高だった。この成長を支えたのは辛ラーメンだ。辛ラーメンの売上高は前年比19%増で、海外売上高の伸びのほぼ半分を占めた。
報告書の中で最高経営責任者(CEO)のイ・ビョンハクは「海外で高い成長を達成した。米国で2つめとなる工場が稼働し始め、極めて重要な役割を果たした」と述べている。また、市場調査会社Euromoniter(ユーロモニター)のデータを引用して、米国の即席麺市場における農心の市場シェアは2021年に25.3%だったことも明らかにした。
「米国事業は2010年以降、毎年10%超の成長を達成している。映画『パラサイト』からドラマ『イカゲーム』まで、人気が高まっているKコンテンツを利用して韓国の即席麺ブームを起こし、以来、家庭で簡単に作れるという即席麺の強みを米国市場で証明してきた」とイは説明した。
Kコンテンツ人気にあやかるだけでなく、農心はマーケティングや研究・開発を通じて即席麺の人気を高めようと取り組んできた。例えば、有名シェフであるゴードン・ラムゼイの『ヘルズ・キッチン』のような人気テレビ番組に広告を出したり、タイ市場向けのトムヤムクン味のようなローカライズした味を開発したりした。
ソウルに本社を置く農心はもともと、韓国の「ラーメン王」として知られる辛春浩(シン・チュンホ)が1965年にロッテ産業として創業した。辛は2021年に90歳で死去し、長男の辛東源(シン・ドンウォン)が現在、会長を務めている。
(forbes.com 原文)