こうした中、中国の指導者たちはここ数カ月というもの、分野を問わず先進国の実業家や政治家を口説こうと躍起だ。習近平国家主席は米国のビジネスリーダーたちを2度にわたって歓待し、中国がいかに彼らを高く評価しているかをアピールした。欧州を歴訪した際にも同様のもてなしをした。ごく最近では李強首相を韓国・ソウルに派遣し、日韓の経済界に対してはもちろん、両国首脳にも積極的なメッセージを伝えた。しかし、反応はいずれもあからさまな拒絶ではなかったにしろ、温かさはほとんど感じられないものだった。
中国政府が必死になる理由ははっきりしている。国内では深刻な不動産危機が収束する気配もなく、住宅購入や建設活動が停滞し、家計資産の目減りなどを理由に消費者は財布のひもを固く締めている。これに加えて、民間企業を敵視する習政権の以前の政策が響き、民間投資や事業拡大、雇用も停滞。対中貿易規制や、積極的なサプライチェーンの多角化と中国からの生産移転により、輸出の遅滞も起きている。
経済を下支えできる要因が内外に見当たらないがゆえに、中国政府は現状「魅力攻勢」としか評しようのない外交姿勢を取らざるを得なくなっているのだ。ねらいは、かつて中国の急速な発展を後押しした外資の熱意をいくばくかでも取り戻し、経済を活性化させることにある。
習主席は昨年11月、米サンフランシスコで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で米財界人と会談し、中国には豊かなビジネス環境があり外資を歓迎していると太鼓判を押した。今年に入ると、さらに多くの米ビジネスリーダーを北京に招待し、同じメッセージを伝えた。その直後には欧州歴訪でも同様の売り込みを行った。米国でも欧州でも人々は習主席を好意的に迎え、礼儀正しく友好的に接したが、さほど実質的な成果にはつながらなかった。投資の流れも貿易も大して回復していない。