しかし、投資会社イタリアン・ファウンダーズ・ファンド(IFF)共同創業者のロレンツォ・フランツィは、今こそ好転の時が来たと考えている。同社は米国時間6月10日、100人以上の起業家や富裕層から5380万ドル(約85億円)以上を調達したと発表した。「イタリアのベンチャーキャピタル(VC)のエコシステムは、新たな時代に突入した」とフランツィは述べている。
P101ベンチャーズとディールルームのデータによると、イタリアのスタートアップの昨年の合計調達額はわずか13億ドル(約2050億円)で、2022年から53%減という憂慮すべき金額だった。P101のマネージングパートナーのアンドレア・ディ・カミッロは、「イタリアのVCのエコシステムはここ数年で大きな進歩を遂げているが、それでも他の欧州諸国には遅れをとっている」と指摘する。
それでも、希望が持てるニュースもある。ミラノに本社を置くフィンテック企業、Scalapay(スケーラペイ)とSatispay(サティスペイ)の2社は昨年、評価額が10億ドルを超えるユニコーンに成長し、世界中の投資家の注目を集めた。両社の出資者にはテンセントやタイガーグローバル、グレイハウンド・キャピタルなどの大手が含まれている。
また、個人資産も動き始めており、フィアット創業家のアニェッリ家が保有する投資会社のエクソール・ベンチャーズは、2022年にシード投資ファンドを立ち上げた。
「今必要なのは、より体系化された投資アプローチです」とIFFのフランツィは述べている。このファンドは、イタリアのスタートアップ企業を自ら見つけ、支援する個人に依存するのではなく、成功した起業家が資金援助だけでなく、アドバイスやネットワークへのアクセスなどの支援を与えるプロセスを提供している。IFFはまた、イタリアのスタートアップへの投資に意欲を持つ海外の投資家を現地のパートナーとつなぐ役割を果たしている。