経営・戦略

2024.06.19 17:00

石ころの中から金塊を探せ、「雑音に耳を傾ける」経営戦略

Getty Images

ビジネスにおいて、「雑音(ホワイトノイズ)を切り離せ」というアドバイスは的確だとされている。重要なことにのみ集中し、耳に入ってくる雑多な話や余計な意見には耳を貸すな、ということだ。

しかし、そうした雑音が成功のカギを握っている場合もある。それがとりわけ当てはまるのは、ビジネスが発展途上にあるときや、方向を転換しようとしているときだ。

ビジョンを描き、できるだけそれに集中することは、ビジネスにとって不可欠だ。しかしそれだけでは、きめ細かに配慮した決断にはつながらないかもしれない。とりわけ、スタートアップや、立ち上げ間もない企業は、既存の企業とは異なり、多様な観点や学びの経験が不足している場合がある。

「雑音に耳を傾ける」とは、混沌に迷い込んで行き詰ってもかまわないということではない。視野を広げることにより、その混沌のさなかで金塊を見いだせる可能性があるということだ。

雑音に耳を傾けることで、異なる視点を持つ

新しいプロジェクトや事業が始まって間もないときは アドバイスを求め、それに耳を傾けよう。そうして得たアドバイスが、成功を決定づけるかもしれない。

・多様な観点は、イノベーションを刺激する:新しい意見は、新しいアイデアを連れてくる。ただし、目指すべきは、提案を片っ端から実行に移すのではなく、その提案を判断材料として生かし、最終的な製品を向上させることだ

・早期に検証し、軌道修正する:ビジネスのコンセプトについて、複数の人から同じ潜在的問題点を指摘されたとしたら、一歩下がって見直そうとするはずだ。早い段階でフィードバックを得て、それを基に最適化していけば、時間とリソースを節約できる可能性がある

・支えとなるコミュニティを構築する:すべての提案が自分のやり方に適しているとは限らないが、提案してくれた人は、貴重な仲間やメンターになるかもしれない。そうした意見や情報を感謝し、検討することで、頼りにできそうなネットワークとの結びつきができていく

雑音に耳を傾けて成功した企業事例

スネハ・セガールは、Geeks And Experts(ギークス・アンド・エキスパーツ)の共同創業者兼CEOだ。同社は、スタートアップやスケールアップ企業(初期段階を経て事業を急拡大中の企業)が広報業務を委託できる、限られた数のPR人材を採用するためのプラットフォームだ。とはいえ、同社が創業当初に目指していたのは、創業者と各種の業界専門家とをつなげて、ビジネス拡大を後押しすることだった。

セガールは初期の自社について、「創業者たちの力になりたいと思っていた。つまり、ビジネスを立ち上げたばかりで、自社の能力を広く知らせることができずにいる創業者たちのことだ」と説明する。「力を入れていたのは、どちらかというとマイクロ・コンサルティングだ。創業者と専門家をつなげ、ビジネスの前進・進化のための、簡単で取り組みやすいアドバイスを提供したいと考えていた。しかし、市場動向を調べたところ、創業者の多くは、どのような支援が具体的に必要なのかさえ、わかっていないことに気がついた」

また、予算に制約がある創業者が多いこともわかったという。残念なことに、セガールのクライアントの多くが求めていたのはメンターであって、それは同社のビジョンと合致していなかった。

そこでセガールは、計画をいったん撤回した。つまり、「サービスを構築してからユーザーを獲得する」ことをやめたのだ。そして、創業者がどのような悩みや課題を抱えているのかを調査した。その結果、広報活動が不十分で、広報担当者を採用する余裕もない創業者が多いことがわかった。
次ページ > 雑音をうまく取り込むには

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

ForbesBrandVoice

人気記事