ソフトバンクグループやグーグルからの支援を受けるテンプスAIは米国時間6月14日、ナスダックで新規株式公開(IPO)を果たし、株価はIPO価格から9%上昇し、40.25ドルで取引を終えた。これにより、同社の時価総額は66億ドル(約1兆円)に上昇し、レフコフスキーの持ち分(推定33%)の価値は22億ドル(約3460億円)に到達した。
テンプスAIは、レフコフスキーにとって2011年に上場したグルーポン以降で初めての上場企業となった。フォーブスは、彼の保有資産を約39億ドル(約6140億円)と試算している。
妻の乳がんが創業のきっかけ
レフコフスキーは、妻が乳がんと診断された後の2015年に、テンプスAIを設立した。2019年のフォーブスのインタビューで、彼は「妻のケアに用いられるデータが非常に少ないことにただ困惑した」と述べていた。がん治療に重点を置いた企業としてスタートした同社は、2300人の従業員を抱え、がん患者の腫瘍サンプルをシーケンスし、機械学習で訓練された人工知能(AI)モデルで分析することで、より正確な診断と個別化された治療を決定する支援を行っている。テンプスAIの顧客には、2000以上の医療サービス提供者と、アストラゼネカやGSKなどの、世界20大製薬企業のうちの19社が含まれている。同社の2023年の収益は5億3200万ドル(約838億円)だったが、損失は2億1400万ドル(約337億円)に達していた。米証券取引委員会(SEC)への届出によると、同社の長期的な目標は、AIを使って医療データを分析し、世界中の「すべての主要な疾患領域」におけるケアのパーソナライズを実現することだという。
テンプスAIは、レフコフスキーと彼の長年のビジネスパートナーでグルーポンの共同創業者であるブラッド・キーウェルが共同設立したベンチャーキャピタルのライトバンクから1000万ドル(約1億5700万円)の出資を受けて設立された。それ以来、同社はグーグルやNEA、AOLの共同創業者のスティーブ・ケースが設立したレボリューション、ソフトバンクグループ、ベイリー・ギフォードなどの投資家から累計で13億ドル(約2049億円)以上を調達している。テンプスAIは、上場により4億1000万ドル(約646億円)を調達した。
レフコフスキーは、株式公開後の同社の33%という大きな割合を保有しているが、これはベンチャーキャピタルからの支援を受けるハイテク企業が一般的に、複数の調達ラウンドを経て株式を希薄化させる中で異例のことだ。レフコフスキーは、同社の議決権付き株式のすべても所有しており、議決権の約65%を掌握している。
テンプスAIは、レフコフスキーが創業または共同創業した少なくとも9社のうちの1社だ。