ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)の16日の作戦状況評価によると、先週末から同日にかけての激しい戦闘で、ウクライナ軍はボウチャンシク中心部にある工場とその周辺で最大400人のロシア兵を包囲した。救出の試みが繰り返されたものの失敗し、およそ30人が捕虜になった。
ロシア軍は5月10日、数万人規模の兵力を投入してウクライナ北東部に新たな戦線を開いた。国境を越えて南に進撃した複数の大隊は、国境付近の防御の手薄な村々を素早く占領し、さらにボウチャンシクに向けて前進した。ボウチャンシクは、ロシアとの国境から南下し、約40km先のハルキウ市の方面に進もうとした場合、最初に現れる規模の大きな都市だ。
ウクライナ軍はここを戦いの場に選んだ。精鋭の第82独立空中強襲旅団を含む数個旅団の部隊が急派され、数週間にわたる激戦の末、ボウチャンシク中心部を東から西へ流れるボウチャ川のすぐ北でロシア軍の進撃を食い止めた。
ロシア軍は再集結し、少なくとも2個大隊に相当する数百人の歩兵が、ボウチャ川の右岸(北側)にあるPJSCボウチャンスキー骨材(セメントに混ぜる砕石や砂)工場に攻め込んだ。ウクライナでの戦闘では工場などの工業施設が拠点になることが多い。大きく頑丈な建物は、兵士が隠れて砲撃やドローン(無人機)から身を守れる場所になるからだ。
ロシア側は、この工場を占拠したうえで、そこを足場に渡河作戦を行い、ボウチャンシク南部に侵入することを目論んでいたようだ。
だが、それは失敗した。第9独立狙撃大隊かロシア義勇軍団(編集注:ウクライナ側で戦うロシア人の義勇兵部隊)、第36独立海兵旅団とみられるウクライナ側部隊は骨材工場の西側を攻撃し、北へ数ブロック前進した。その結果、工場内のロシア軍部隊は西の友軍部隊と切り離された。
「ロシア兵はここで包囲され、退避や増援のチャンスはゼロだ」。ウクライナ軍のあるドローン(無人機)操縦士はX(旧ツイッター)に書き込んでいる。「死傷したオークどもの群れだ」とロシア兵の蔑称を使って言い添えている。
❗The russians are surrounded here with zero chances of evacuation or reinforcements.
— Азов South (@Azovsouth) June 15, 2024
A bunch of dead and wounded orcs💀💀💀💀💀#Vovchansk🇺🇦 pic.twitter.com/gBywPSCBU4