この銀河を撮影した最新画像は、大部分が銀河で構成される観測対象領域「ウルトラ・ディープ・フィールド」を捉えたもので、JWSTの驚異的な感度を示している。
望遠鏡で夜空を観測する場合、観測対象は過去であり、天体の過去の姿を見ることになる。月を観測すると、13秒前の月の様子がわかるわけだ。太陽の場合は、これが8分になる。天文学者らは、宇宙の始まりにできる限り近くからの光を捉えようと、永遠の探求を続けている。その目的は、宇宙で最初に誕生した恒星や銀河(初代星や初代銀河)が、何もないところからどのようにして生まれたかを解明するためだ。
大きな節目
炉座で発見された今回の銀河「JADES-GS-z14-0」は、これまでに観測されたどの天体よりも、この「宇宙の夜明け」の時代に近い宇宙に存在している。この銀河の光は、JWSTに搭載された極めて高感度の近赤外線分光器NIRSpecで赤外線として検出された。宇宙の夜明けは、ビッグバンから数億年後に初代の銀河が生まれた時代のことだ。これは、初期宇宙の研究における大きな節目だ。膨張している宇宙の中を進む光は、引き伸ばされて波長が長くなることで、スペクトルの赤色の方に移動(赤方偏移)する。JADES-GS-z14-0の波長の伸びの大きさを表す「赤方偏移パラメーターz」の値は14で、これまでに検出された中で最大だ。今回の発見を成し遂げたのは、JWSTによる深宇宙観測プログラム「JWST Advanced Deep Extragalactic Survey (JADES)」のチームだ。
記録更新
JADES-GS-z14-0の顕著な点は、観測史上最遠の記録更新だけでなく、予想よりも大きくて明るいことだ。JADESのチームリーダーの1人、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのダニエル・アイゼンシュタインは「この銀河の大きさから、その光の大半が多数の若い恒星によって生成されていることが明確に分かる」と指摘している。今回の観測結果は、宇宙のかなり初期の段階で、大型で大質量の銀河が形成されていたことを示唆している。今回の発見を報告した(査読前)論文の筆頭執筆者で、イタリア・ピサ高等師範学校のステファノ・カルニアーニは「JADES-GS-z14-0はこれから、この現象の原型になる」と述べている。「宇宙がわずか3億年間で、こうした銀河を形成できるのは驚くべきことだ」
JWSTが2022年に科学運用を始めるまで、このようなことは不可能だと考えられていた。