欧州

2024.06.17 11:00

ウクライナ空軍、貴重な攻撃機を駐機中にまた失う 同じ基地で損失重ねる失態

ウクライナ空軍のSu-25攻撃機。2017年7月、ウクライナ南部ミコライウ州オチャキウ(Vitalii Masliukov / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍のドルヒンツェベ航空基地はウクライナで最も攻撃を受けやすい基地のひとつだ。ウクライナ南部の前線から70kmほどしか離れていないクリビーリフ郊外にあるこの基地は、ロシア軍の最も優れた自爆ドローン(無人機)「ランセット」の射程圏内にある。

ランセットの長射程タイプ、いわゆる「イズデリエ53(製品53)」が昨年8月に登場してから、ロシア軍はほぼ数週間ごとに、このドローンでドルヒンツェベ航空基地のウクライナ軍機を狙ってきた。

これまでに、同基地で駐機中だったウクライナ軍機少なくとも4機がランセットの攻撃で被弾した。昨年秋にあった最初の2回の攻撃はウクライナ空軍にとって不意討ちで、MiG-29戦闘機Su-25攻撃機を1機ずつ爆破されている。ただ、同年11月にあった3回目の攻撃では飛行不能なデコイ(おとり)のSu-25が被弾し、実害は免れたようだ。

今月11日かその少し前、今回はおそらく飛行可能なSu-25がランセットの攻撃で被弾した。ウクライナ空軍はこれをどう弁解できるだろうか。ロシア軍の偵察ドローンが上空高くから撮影した映像には、重量12kgほどのランセット1機が駐機中のSu-25に猛スピードで突っ込み、爆破したとみられる様子が捉えられている。この機体がデコイだったという形跡はない。

ウクライナ政府も、防空に問題があることは理解している。ボロディミル・ゼレンスキー大統領はつい先月、ウクライナに最も不足しているのは防空システムだと訴えていた。ウクライナ空軍の旅団隷下には対空砲などを装備する部隊が置かれているが、その砲は射程が短く、より射程の長い対空ミサイルの完全な代わりにはならない。

先月、オランダが中心となって、ウクライナへのレーダーやミサイルの供給を増やす取り組みが急きょ始まったのは理由のないことではない。この取り組みは、米国製のパトリオットやドイツ製のIRIS-Tといった防空システムの追加供与というかたちで結実しつつある。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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