今回の調査では、米国人の休暇の行き先や理由のほか、現地でどの程度価格を気にするのかについて明らかにしている。例えば、「没入的で有意義な」体験をするために、旅行の日程がこれまでの平均4日から5日に延びていることが判明した。
マスターカード経済研究所のミシェル・マイヤー主任エコノミストは、消費者に経験や体験を経済価値として提供する経験経済では、消費者はおおむね価格に寛容で、物質的な商品より体験のために支出していると説明。実際、体験への支出は観光売上高の12%を占め、少なくとも過去5年間で最高を記録していると述べた。
一方、旅行費用も大幅に上昇している。米国では3月の平均航空運賃が2019年時点と比べて20%以上値上がりし、同時期の平均宿泊料も15%上昇。消費者の中にはこれに適応し、割高なホテルの代わりに船旅を選ぶ人も多い。マスターカードの報告書によると、船旅の価値が認識されていることもあり、今年の船旅への支出は2019年時点に比べて16%増加している。ホテルの価格上昇が続いていることから、クルーズとホテルの価格差は拡大しており、船旅の方が予算に見合った選択肢となることが多い。とはいえ、クルーズ客船は乗客に健康治療や高級アルコール飲料、陸上周遊(追加特典として販売されるガイド付きの「体験」ツアー)などのサービスを販売することで、リゾートホテルとの価格差を埋めることにも成功している。
米国人が選ぶ2024年夏の旅行先ランキング
1位 カンクン(メキシコ)2位 オラニエスタッド(オランダ自治領アルバ)
3位 ロンドン(英国)
4位 ローマ(イタリア)
5位 プンタカナ(ドミニカ共和国)
6位 サンフアン(プエルトリコ)
7位 アテネ(ギリシャ)
8位 バルセロナ(スペイン)
9位 東京(日本)
10位 サンティアゴ(ドミニカ共和国)
これらの場所はいずれも、しっかりとした観光設備と温暖な夏の気候を誇っている。カンクンやサンフアンといった目的地には、米国人が好む有名なリゾートがあり、美しい海岸と米国からの直行便がある。ギリシャの玄関口であるアテネでは、空港跡地に建設中の約240ヘクタールの公園が間もなく開園する。ロンドンは米人気歌手テイラー・スウィフトが8月に公演を行うことから、第3位に浮上した。サッカーの国際大会も同様の効果をもたらす。
新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっていた間、2年半近く観光客の入国を制限していた東京は、現在大人気の観光地となっている。日本政府観光局(JNTO)によると、3月には約300万人の外国人観光客が訪れ、過去最高を記録した。空前の円安も、日本を訪れる外国人観光客の増大に一役買っている。
旅行者にとって、行き先の物価が手頃かどうかは極めて重要だ。この夏、五輪が開催されるフランスの首都パリがランキングに入っていない理由は、ここにあるのかもしれない。マスターカードの分析によると、目的地の物価と旅行者の滞在日数との間には明確な反比例関係がある。行き先の物価が安いほど旅行者は長く滞在し、ひいては地域経済にも恩恵をもたらす。
大局的な視点では、現代は旅行の選択肢が氾濫しているものの、手頃で価値のある行き先を選ぶ旅行者の能力は向上していると言えるだろう。
(forbes.com 原文)