トランプは13日夜、ユーチューバーのローガン・ポールが配信するポッドキャストに出演。AIについて「非常に強力なもの」だとの考えを表明し、「われわれはまさにその黎明期に立ち会っている」「それは憂慮すべきことだ」などと語った。
一方で、AIを使って演説原稿の添削をしてもらったことがあり、テクノロジーに感銘を受けたとも発言。具体的な名前は出さなかったが、これからトランプが演説をすると知ったIT業界の「トップクラスの人物」が、「何度かクリックボタンを押したかと思うと、15秒後には(添削済みの)演説原稿を見せてくれた。とてもすばらしい出来だったので、『これを使おう』と言った」と明かした。
トランプは、このような体験は初めてだったとも語り、その演説の原稿を手掛けたスピーチライターに何か言うことはないかと水を向けられると、カメラ目線で「ビンス、きみはクビだ!」と冗談を飛ばした。ビンスというのは、トランプのスピーチライターを務めているビンス・ヘイリーのことだ。
さらにトランプは、AIが「文字通り数分のうちに」演説原稿を仕上げたため、その速さに何より驚いたと告白。「思うに、今後なくなるだろう業界の一つは、すばらしいスピーチライターたち(の業界)だろう」と付け加えた。
このポッドキャストでは、ディープフェイクをはじめとする他のAI関連のトピックについても触れている。トランプは、自分がある商品を宣伝しているディープフェイク動画を見た時のことについて「(偽物だと)断言できなかった。声は完璧で、言葉と唇の動きも完璧に合っていた。読唇術ができる人でも、間違いなく完璧だと言うだろう」「恐ろしいことだ」と話した。
そして、たとえば現職の米大統領を使ったディープフェイク動画で「核ミサイル13発」が敵対国に向けて発射され、13分以内に命中すると発表された場合、たとえばロシアや中国が「あれは本当のトランプではない」と確認する方法はあるのかとイーロン・マスクに尋ねたところ、「方法はない」との回答だったと明かした。
今年の米大統領選挙をめぐっては、生成AIを使用した偽情報の拡散に懸念が高まっている。1月には、ジョー・バイデン大統領のディープフェイク音声を使ったロボコール(自動音声電話)が予備選に投票しないようニューハンプシャー州の民主党支持者に呼びかける事件があり、連邦通信委員会(FCC)はAI生成されたロボコールの使用を禁止した。2023年には共和党全国委員会(RNC)が、「バイデンが再選した場合に米国が直面する不吉な未来」を描いたAI生成動画による中傷広告を公開している。
(forbes.com 原文)