宇宙飛行士のトレーシー・C・ダイソンとマット・ドミニクは、通信アンテナから不具合のある無線周波数グループと呼ばれる電子機器を取り外す作業を命じられていた。また2人は、ISSの外で微生物がどのように生息しているかを分析するためのサンプル採取も行うことになっていた。
![NASAの宇宙飛行士、トレーシー・C・ダイソン(NASA)](https://images.forbesjapan.com/media/article/71701/images/editor/fd2b42c48b7429954f083a7effdb8a4456811bdc.png?w=1200)
船外活動の手順は通常どおりに進められていた。NASA TVの準備状況のライブ中継では、宇宙服を着用した2人の飛行士が、減圧症を防ぐためのプリブリーズの一環として両腕と両脚を動かしているところが映されていた。
あるタイミングで、宇宙ステーションの地上チームは1人の宇宙飛行士から「プライベートな医療相談」の要求を受けた。「宇宙飛行士は週に複数回、フライトドクターと話す機会が与えられており、もちろん船外活動のような激しい運動の際もドクターは待機しています」と、ライブ中継のホストを勤めたリー・チェシャイアはいう。NASAは、この相談の直後に船外活動を中止した。
NASAのISS用宇宙服は、正式にはExtravehicular Mobility Units(EMU、船外活動ユニット)と呼ばれている。ISSに装備されたEMUの数には限りがある。宇宙服の設計は40年以上前のスペースシャトルプログラム時代に基づいている。
![船外活動を行うNASAの宇宙飛行士、ジェシカ・メイア(NASA)](https://images.forbesjapan.com/media/article/71701/images/editor/d84927133b9cc291ee623ffe922a4664cee572d3.jpg?w=1200)
宇宙服の問題は、過去にも船外活動を中止する引き金になったことがある。2019年、初めて計画された女性のみによる船外活動は、宇宙服のサイズ問題のために中止された。用意された宇宙服のサイズは限られており、両宇宙飛行士のサイズのニーズに合わせることができなかったのだ。初の女性のみによる船外活動は同じ年に実現し、NASAの宇宙飛行士、クリスティーナ・コックとジェシカ・メイアがチームを組んでISSの船外で修理作業を行った。NASAは、宇宙服ヘルメット内の水と湿気問題にも対応している。
NASAは6月に3回の船外活動を予定していたが、今回の延期によってスケジュールを再検討している。
(forbes.com 原文)