経営・戦略

2024.06.24 15:00

世界のEV市場は減速しても中国新興の小鵬汽車が強気の理由

2024年北京国際自動車展覧会で公開された小鵬汽車の空飛ぶ自動車「XPENG AEROHT」(CFOTO / Future Publishing / Getty Images)

欧州のEV市場でシェアわずか3%の中国メーカーの7位に甘んじるシャオペン。生き残りをかけて奮闘する同社が目指すのは、中高級ブランドとしての地位だ。


急成長していた世界のEV(電気自動車)市場の成長ペースが鈍化するなか、上海汽車集団(SAIC)や吉利汽車(ジーリー)など、最も多くのEVメーカーを抱える中国市場では競争が激しくなっている。そうしたなか、欧州では中国メーカーで7番目のシェアを誇る小鵬汽車(シャオペン)が欧州への輸出で巻き返しを狙っている。激化の一途をたどる価格競争と新モデルの開発、さまざまな規制や半導体不足を乗り越え、生き残ることができるだろうか。

「2025年末には中国で空飛ぶ車を納品予定だ」シャオペンの子会社は今年1月、ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市CESで空飛ぶ車の概念モデルを展示したうえでそう発表し、話題を呼んだ。
 
計画への懐疑的な見方はあるものの、この宣伝活動は高度な技術力をもつ高級ブランドというシャオペンのイメージづくりに役立ったはずだ。共同創業者であり会長兼最高経営責任者(CEO)の何小鵬(47)は、同社を中国有数の先駆的な電気自動車(EV)メーカーにつくりあげてきた。

何は23年、テスラが中国での販売価格を米国より40%引き下げたことに端を発する激しい価格競争を、なんとか乗り切った。痛手を負った売り上げを伸ばすため、テスラのモデルYにぶつけるかたちでSUVのG6を発売。フォルクスワーゲンを投資家に引き入れ、昨年7月、シャオペン株4.99%と引き換えに7億ドルの資金を得た。シャオペンの通年決算はまだ発表されていないが、第3四半期の収益は前年比25%増の85億元(約1800億円)だった。ただし、損失は39億元に拡大している。

「困難はチャンスももたらします」

何は昨年12月、北京での独占インタビューでそう語った。従業員宛ての書簡で彼は、研究開発費を23年の52億元から40%増やし、新たに4000人を採用すると述べている。
 
今年1月にテスラは、中国を含む複数の市場で値下げを実施。中国の調査会社86リサーチのアナリストで上海を拠点にするワン・ハンヤンは、今年の競争は極めて激しいものになると語る。
 
湖北省出身で、広東省の華南理工大学でコンピュータサイエンスを修めた何は、景気の波には慣れている。大学卒業後、香港証券取引所に上場するソフトウェア開発企業アジア・インフォに勤め、04年にUCウェブというモバイルブラウザ事業を設立、10年後に43億ドルでアリババに売却した。そして14年、まだ萌芽期にあったEVに商機を見て、シャオペンを共同創業。アリババは後に、シャオペンの投資家になった。
 
シャオペンの最初のモデルであるSUV、G3の量産準備が整った18年、中国政府がEV購入の補助金を縮小したため、消費者需要は落ち込んだ。同社は未公開株投資会社を含む投資家と何自身から4億ドルの資金を確保して事態を乗り切った。20年にはニューヨークで株式公開し、15億ドルを調達。間もなく株価は急騰し、評価額は当時のフォードとゼネラルモーターズの評価額の合計も上回りそうな570億ドルになった。

2つ目のモデル、セダンのP7が発売直後からヒットし、シャオペンがテスラの本格的な競合として台頭するかもしれないという見方が広まったためだ。しかしその後、競合各社による新モデルの発売、コロナ禍の都市封鎖による供給網へのダメージなどで、シャオペン株は急落した。
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文=ワン・ユエ 写真=ファン・イーフェイ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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