BYDの株価は、13日の香港株式市場で8.8%、深圳市場では6%急騰したが、これは、同社製品に対する関税の引き上げ幅が市場が予想していた30%よりも大幅に低かったためだ。EUは中国政府からの支援の度合いに応じて税率をメーカーごとに調整しており、BYDに課される関税は17.4%と、他のメーカーよりも大幅に低くなっている。
これに対し国有企業である上海汽車集団の税率は38.1%で、吉利汽車は20%とされている。
「市場は、BYDへの打撃は以前懸念されていたほど深刻ではないと考えている」と、香港を拠点とするエバーブライト・セキュリティーズ・インターナショナルのアナリスト、ケニー・エンは述べている。「BYDは、他の中国メーカーに比べて優位に立つ可能性がある」
エンによると、最も大きな打撃を受けるのは上海汽車集団で、BYDは同社から市場を奪うことができるという。上海汽車集団が展開する自動車ブランドのMGは、価格の安さから欧州で人気となり、昨年は納車台数のランキングで5位に入っていた。例えばMG4の価格は2万8990ユーロ(約490万円)で、競合のフォルクスワーゲンのID.3の3万3000ユーロ(約557万円)よりも大幅に安い。
一方、BYDは、電気SUVのAtto 3の価格を欧州メーカーの競合モデルと同水準の3万8000ユーロ(約640万円)に抑えている。この車は昨年、欧州で約1万6000台が販売された。
2023年に世界で300万台のEVを販売したBYDは、ハンガリーに欧州初のEV工場を建設し、2026年の生産開始を目指している。世界で2番目に大きい欧州のEV市場で5%の市場シェアを獲得することが同社の目標だ。BYDは、来年からより安価な新型のハッチバック車両などを欧州市場に投入するとしている。
調査会社ローディアム・グループは4月のレポートで、BYDの欧州での利益率は、中国での5%という薄利に比べると一般的に高いため、同社が欧州市場で拡大することを阻むためには50%もの高い関税が必要になると述べた。
「EUの中国のEVに対する関税は、中国メーカーの市場シェア拡大を遅らせるほど高くはならない可能性が高い」と同レポートは述べ、欧州の政策立案者は「環境や国家安全保障に関連する要因に基づく制限など、他の手段に目を向けるかもしれない」と付け加えた。
(forbes.com 原文)