事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」から紹介しよう。(転載元の記事はこちら)
「うちの孫です」ではなく「4代目です」と紹介された幼少期
日本企業の99%以上は中小企業で、その大半はファミリービジネス(同族企業)だ。創業者の子、孫、ひ孫……と、次の世代にバトンを渡すのが自然な流れ。先代から事業を引き継いだ経営者の多くは「子どものころから、自分が後継者になる」という意識がある。星野氏も同様だったという。
「軽井沢というこぢんまりした街で生まれ育ったこともあり、星野温泉旅館(現:星野リゾート)の2代目だった祖父に連れられ、いろいろな方に紹介されるのが常でした。祖父はいつも『孫の佳路です』ではなく『4代目です』と紹介されます。物心ついた頃から『僕は4代目になるんだな』と理解していました」
誰もが顧客や取引先になり得るからこそ、早いうちから後継者の顔見せをしていた面もあるが、「事業承継というゴールに向かって、幼いころから創業家の一員であるという意識を持たせる」という先代の狙いもあっただろう。
子や孫が成長して、別の道を望むかもしれない。だが、あらかじめ「ゆくゆくは継いでほしい」という意思表示をしておけば、本人も希望を言い出しやすくなる。
修行はアメリカ、経営とスポーツに見いだした共通点
経営には「修行期間」を設けることも重要だ。星野氏は、慶應義塾大経済学部を卒業後、世界で最も有名な「ホテルマネージメント」として知られる米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程を修了した。「後を継ぐからには、最高の環境で学ばなければ」という思いがあったという。
「経済学部を卒業したものの、体育会の活動に夢中だったので、経済を突き詰めたという手ごたえはありませんでした。『まずい、このままでは経営なんてとてもできない』と考えて、コーネル大学で学ぶことを決めました」
1986年、星野氏はコーネル大学修士課程を修了し、「経営はスポーツと似ている」という気づきを得る。
「経営も、スポーツと同様、理論があるんですよ。世界中の教授たちが書いた論文には、『こうすれば成功できますよ』という経営のノウハウが明快に書いてあります。理論を身につければ、優秀な経営者になれるのではないか──。これこそが留学時代の最大の発見だと思っています」