岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の宮竹貴久教授と、琉球大学農学部の日室千尋研究員を中心とする研究チームは、死んだふり(擬死)状態のアリモドキゾウムシがいつ目覚めるのかを調査したところ、雄は性成熟した雌が近くに来たときに、特別に早く目覚めることがわかったのだ。
アリモドキゾウムシをピンセットでつまんで刺激し、擬死状態にした数匹の雄雌それぞれを、別の個体と同居させて目覚めるまでの時間を計測した。すると、性成熟していない雌、性成熟した雄との同居、または何も同居させない場合に比べて、性成熟した雌と同居させた場合、約15分経過した時点で、性成熟した雌と同居したときにだけほぼすべての雄が目覚めた。そのほかのケースではほぼ半数がまだ擬死を続けていた。その違いは歴然だ。さらに、雌の性フェロモンを与えた場合は、ほかの科学物質と比較して、わずか100秒ほどですべての雄が目覚めてしまった。
つまり雄は、敵を回避するよりも繁殖を優先させるということだ。これは「動物の生存戦略に新しい視点をもたらしたという点で」社会的意義があると研究チームは話している。
ちなみに宮竹教授は擬死研究の第一人者であり、『「死んだふり」で生きのびる 生き物たちの奇妙な戦略』(岩波科学ライブラリー)という本も著しているが、同書では、死んだふりの研究が人の神経疾患の治療に役立つ可能性も示唆している。
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