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2024.06.14 10:30

AIによる「電気の爆食い」で注目、カーボンフリー電力に挑む新興企業たち

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人工知能(AI)テクノロジーをめぐる誇大宣伝や莫大な資金が飛び交う中、一つだけ確かなことは、AIを支えるデータセンターが必要とする莫大な電力が、既存の電力網のキャパシティを大幅に上回るものになることだ。

ゴールドマン・サックスのレポートによると、AIアプリケーションはデータセンターの電力需要を160%増加させ、ChatGPTのクエリは、グーグル検索の約10倍もの電力を必要とするという。米国では、既存の化石燃料を用いた発電所がほぼ限界容量に達しており、風力や太陽光などの再生可能エネルギーも、まだ十分に力を発揮できていない。

そのため、マイクロソフトを含むハイテク大手やスタートアップが、その需要を満たすためのカーボンフリーな電力の供給をめぐる、熾烈な競争に突入している。

小型モジュール原子炉(SMR)の商業化を進める米国のスタートアップ企業、NuScale Power(ニュースケール・パワー)も、そこに大きなビジネスチャンスを見出している。「当社のテクノロジーは、今の時代に最もマッチしたものと言えます」と、同社の最高商務責任者(CCO)のクレイトン・スコットは述べている。

ニュースケール・パワーは、データセンターとそのAI顧客のために、新たなテクノロジーで電力を供給しようとしている。オレゴン州のポートランドを拠点とする同社のSMRは、1基あたり77メガワットのカーボンフリーの電力を継続的に供給できる。

ニュースケール・パワーは、10年以上にわたる研究開発期間を経て2022年にニューヨーク証券取引所に上場し、データセンター開発企業スタンダード・パワーに24基のSMRを供給する計画だ。

しかし、原子力規制委員会の長期的な審査プロセスに直面する同社の原子炉の配備は、まだ数年先になる見通しだ。ニュースケール・パワーの今年第1四半期の売上高は、わずか460万ドル(約7億2000万円)のみで、損失は5640万ドル(約88億円)に達していた。

ゲイツやサム・アルトマンらも参入

AIの普及によるエネルギー需要の急増に対応しようとしているスタートアップは、他にも数多く存在する。

バージニア州の環境政策のシンクタンク、Center for Climate and Energy Solutions(C2ES)の分析ディレクターのダグ・ヴァインによると、一般的なデータセンターは約6000世帯分の電力に相当する32メガワットの電力を使用しているが、AI向けのデータセンターは約80メガワットを使用するという。
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編集=上田裕資

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