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新規事業

2024.06.20 14:30

インパクトビジネスを駆動させる「トリプル・インパクトの追求」

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国内外問わず注目を集める「インパクト創出」というキーワード。100を超える世界のインパクト創出企業の事例分析から見えてきた特徴とは何か。


近年、「(社会的)インパクトの創出」というキーワードが、世界中で数多く語られるようになった。インパクト投資が世界170兆円以上に急成長し、金融庁も「インパクトコンソーシアム」を立ち上げ、「インパクト志向金融宣言」に70機関を超える金融機関が署名賛同し、2022年末には「インパクトスタートアップ協会」も発足した。インパクトが資本主義の限界性を超えるために必要な概念ではないか、という関心が世界中で広がっている。

しかし現実的には、インパクト創出ビジネスの設計に悩む事業者が多い。会社で新規事業としてインパクトビジネスを提案しても、「もうからなそうだからやめよう」と言われてしまうこともよくある。
 
筆者は、23年9月に大学院大学至善館に新設したインパクトエコノミーセンター所長として、インパクトビジネスとそのエコシステムに関する研究と教育に取り組んでいる。これまで100を超える世界のインパクト創出企業の事例を横断的に分析し、特徴的な要素を抽出してきた。本稿では企業のインパクトビジネスの考え方の背景とともに、そのエッセンスをお伝えしたい。
 
経済学者ミルトン・フリードマンは、自身の有名な論文で「企業の社会的責任は利益を増やすことにある」として、社会貢献に熱心な企業に対する警鐘を鳴らし、賛否両論さまざまな議論を巻き起こした。

しかし、彼の主張は「いきすぎた市場原理主義者」として誤解されているところもある。実は彼の主張には続きがあり、「そして、個人には利益を超えた社会的責務がある」と述べていたことはあまり知られていない。つまり、社会課題解決において、大企業のCEOが勝手に株主の柔軟で自由な社会貢献の選択肢を奪ってはいけないし、企業の経営者が社会問題解決において個人(株主)より比較優位性があるとはいえない、と主張していたということだ。
 
しかし、今、あらためて考えなければならないことは、本当に企業には社会課題解決においてまったく比較優位性がないと言い切れるのだろうか、という問いだ。企業にも多くの従業員がいて、その一人ひとりに多様な経験と枠を超えたつながりがあり、単純な利益追求以外の価値観をもつ従業員も増えてきている。かつ、企業には独自技術やサプライチェーンなどのつながりもあるからだ。
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文=鵜尾雅隆

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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