国内

2024.06.20 13:30

「私」から始めるソーシャルイノベーション。「私たち」が大切にすべきこととは何か

「うつわ」としてのローカルの可能性

川地:両社が築いてきたライフプロジェクト拡大の「うつわ」は、一見戦略的と見られる部分もあります。例えば地域や事業を分散しているのは、事業の持続可能性を高める側面もあると思います。しかし、人々の生活に溶け込む自然なエコシステムは、決して戦略的な部分だけではなく、例えばある地域住民の方が、ある地域で過ごしづらい状況になったとき、別の地域がアジールになる、といったように一人ひとりの生と向き合うなかで生まれるのだと感じました。

石塚:私はおふたりの人に対する向き合い方が印象的でした。「この人はこういう属性の人」と固定的に見るのではなく、その人のなかにも複数性があり、かつ時間軸のなかでいかようにも変化していくことを前提に「うつわ」を築いている。目の前の個人にしっかりと向き合うためには、具体的なローカルの場所や顔の見える関係性が大切なのですね。クリエイティブデモクラシーにおける近接性の重要さを再認識しました。

富樫:ひとつのローカルから人々の価値観が変わっていく。その連鎖は社会のレベルに接続していくと感じました。ソーシャルイノベーションを通じて「わたし」と「社会」をつなぎ直す。その先で「わたしたち」の手でつくり上げる民主主義へと向かう兆しが見えた気がしました。
富樫重太◎立命館大学産業社会学部卒業。在学中にデザイン会社で勤務。株式会社Periodsの創業を経て、2019年に政策づくりプラットフォームの開発を行うissuesを取締役CDOとして共同創業。2021年より「公共とデザイン」共同代表。

富樫重太◎立命館大学産業社会学部卒業。在学中にデザイン会社で勤務。株式会社Periodsの創業を経て、2019年に政策づくりプラットフォームの開発を行うissuesを取締役CDOとして共同創業。2021年より「公共とデザイン」共同代表。

文=一本麻衣 写真=若原瑞昌、井上陽子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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