ここでひとつトリビア。あの閉店時に流れる曲は、じつは『蛍の光』ではなく、ショパンの『ワルツ第9番』だったことをご存知だろうか。元はスコットランド民謡の『オールド・ラング・サイン』という友と酒を酌み交わす友情の歌。欧米では大晦日に大合唱されることが多い。これが日本に渡り明治の作詞家、稲垣千穎の手により日本語の歌詞がつけられたとされている。
しかしお店の閉店時によく流れるのは『ワルツ第9番』、別名『別れのワルツ』のほうだ。『別れのワルツ』は1940年のアメリカ映画『哀愁』の挿入曲となって広く知れ渡った。言われてみれば、『蛍の光』は4分の4拍子だが、『別れのワルツ』はたしかに4分の3拍子のワルツだ。だが、これが閉店の合図として定着しているのは、どうやら日本だけのようだ。
ダイソーは、USENと早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所とともに、まず一般客150人を対象とした閉店の音楽に関する予備調査を行った。その結果、閉店に相応しい音楽は、郷愁、自然、美しい、落ち着く、静か、といった印象を感じさせるものがよいとわかった。次にダイソーの店舗スタッフ647人を対象に、予備調査を踏まえて選んだ曲の妥当性を聞き、そこで特定された曲の特徴を採り入れ『Good Day 〜 閉店の音楽〜』を作った。
さらに、複数の店舗でこの曲を放送し、放送しない店舗との印象の違いを出口調査で確認した。A群の店舗では営業中のBGMをそのまま流し続け、B群では『Good Day 〜 閉店の音楽〜』を放送した。その好感度を7段階評価したところ、新曲の人気が明らかに高いことが判明したのだ。しかも、『Good Day 〜 閉店の音楽〜』には「店舗の評価を高め、顧客満足度や再来店意向を高める可能性がある」ことが明らかになった。
早稲田大学の研究チームによれば、これは五感を刺激して消費者に意識させることなく何らかの行動を引き起こす「センサリー」というマーケティング理論に基づくモノだそうだ。彼らは、閉店時間であることを客に知らせ、強制的な印象を与えず、満足度を損なわず、また来店したいと思わせる音楽を目指したという。
『Good Day 〜 閉店の音楽〜』は配信で聞くことができないので、聞きたい人はぜひ、閉店までダイソーでねばってほしい。
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