経済・社会

2024.06.18 13:00

「クリティカル・ビジネス」時代がやってくる

ソーシャル・ビジネスとの違い

そしてこれがソーシャル・ビジネスとの違いでもあります。従来のソーシャル・ビジネスがすでに社会的にコンセンサスの取れた社会課題に取り組むのに対して、クリティカル・ビジネスでは事業開始時点では必ずしもコンセンサスの取れていない社会課題について「大きな問題ではないか?」という新たな問題提起を行うことから始める点が大きな違いです。社会運動のような少数派の反抗から、市場や関係者の間に、必ず何らかの価値観・世界観の転換が起き、社会を変革するビジネスにつながる。
 
クリティカル・ビジネスの時代への移行については現在、大きな存在感をもつようになっている企業の多くが「社会批判」としての側面を強くもっている点を見ても明らかです。例えば、化石燃料に依存する文明のあり方に批判的なテスラや大量生産・大量消費という生活スタイルに批判的なパタゴニア、過剰な包装やギミックへのアンチテーゼとして登場した無印良品などです。
 
私たちが物質的に満足し、安全・快適・便利という20世紀を通じて追求した価値が飽和しつつある今だからこそ、私たちは「個人の不満」から「社会の不満」へと視線の向きを変えて「社会批判としてのビジネス」「新しい社会のあるべき姿を提案するビジネス」を考える必要があると思います。


山口 周◎独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)、『ビジネスの未来』(プレジデント社)など多数。最新著は『クリティカル・ビジネス・パラダイム』(プレジデント社)。

文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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