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国内

2024.06.24 13:30

鹿児島県の廃校が17年ぶりに復活予定。普く通ずる「ふつうの学校」をつくる

丑田俊輔(中央)古川理沙(写真右)古川瑞樹(左)|一般財団法人 私立新留小学校設立準備財団

不登校や教員不足、少子化など学校現場にかかわる課題が山積するなかで、地域とともに「ふつう」を当たり前に実現する学校づくりの挑戦が始まった。


鹿児島空港から車で約30分、山道を登った先にひっそりと佇むのが、廃校となった新留小学校(姶良市)だ。わずか30世帯の新留地区に立つこの学校は、2007年に3人の卒業生を見送って以来、当時の姿のまま保存されていた。
 
一般財団法人 私立新留小学校 設立準備財団の共同代表として26年4月の開校を目指すのが、秋田県で教育やまちづくりを手がける丑田俊輔、鹿児島県で保育や食の事業を展開する古川理沙、その娘で高校在学中の古川瑞樹(以下、瑞樹)の3人だ。
 
目指すのは、ふつうの学校。「生徒主体で学べる中学に入り振り返ってみると、一般的な小学校の授業はもっと魅力的にできると感じている」という瑞樹は「特別な環境や特別な人がないと完成しない学校ではなくて、全国どこでもその土地の風土を生かしながら実現可能なモデルをつくりたいと考えました」と話す。

かつては当たり前にあった学校と地域とのかかわりを再び取り戻し、学びの半径を学校を中心に300m(低学年)3km(中学年)30km(高学年)と広げていく。裏山や田畑から始まり、住民・企業・行政など、「同級生・先生・家族」以外とも交わることで、人生の土台をつくっていく。また、地域に対しても学校がハブとなり自立したコミュニティ形成や経済の再生にもつなげる。休校とともに休止していた地域の盆踊りや運動会も復活する予定だ。

新しい新留小学校では、学びの柱として「食」と「ことば」を据える。新設するランチルームと図書館を地域に開き、給食は近隣の生産者と連携して提供していく予定だ。「人類学の観点からいえば、人が人たるゆえんは共食と共同の子育てを行うこと。近年は情報革命の影響で脳だけで言葉を処理することが多くなり、言葉と身体感覚が切り離されてしまう傾向があります。そういった課題感からも、食とことばは初等教育や地域づくりにおいて重要だと考えました」(古川)

設立準備財団では23年10月に校舎を購入し、現在はクラウドファンディングなどで資金調達を実施している。25年12月には校舎の改修・新設を完了させる見込みだ。今後、“新留モデル”の横展開も目指す。「廃校だけでなく、過疎地域にある小規模校が廃校になる前から動き出せば、早期に学校を軸にした地域づくりに取り組める。我々のモデルが世界中のローカルに自律・分散的に増えていくことを願っています」(丑田)。


丑田俊輔◎ハバタク代表、Chief Futsu Officer。「ちよだプラットフォームスクウェア」、「越える学校」(五城目小学校)、森林資源×デジタルファブリケーション×コミュニティでつくる集落「森山ビレッジ」などを手掛ける。

古川理沙◎EAT LOCAL KAGOSHIMA 発起人。自律的に人が育つ仕組みやその環境について探究中。ひより保育園、そらのまちほいくえん、日当山無垢食堂代表。NPO法人薩摩リーダーシップフォーラムSELF共同代表。

古川瑞樹◎広島叡智学園高校1年。教育を受ける側の立場として学校づくりに参画。既存の公教育の校長たちや、現役の学生、未就学児たちと丁寧に対話しながら、小学校のあり方のアップデートをすべく奮闘中。

文=田中友梨 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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