かんむり座にある高密度な白色矮星(太陽類似星の残骸)とその伴星が、数日の間、北極星ほどの明るさになり、再び減光していくだろう。
「火炎星」の前兆
最も有名な「新星」であるかんむり座T星(T CrB)、別名「火炎星」は、人の生涯で一度となる爆発イベント、新星爆発を間近に控えている。かんむり座T星は、天文学者が「再帰新星」と呼んでいる恒星であり、爆発のパターンがある変光星だ。天文学者は約10個の再帰新星が知られているが、その中でもかんむり座T星は、最も近い時期に爆発することが予測され、肉眼で見ることのできる唯一の再帰新星となる。ただしそれは「新星になった」その時だけだ。
最も近いといっても私たちがまもなく目にする現象は、実際にはすでに何度も起こったものだ。かんむり座T星が存在する銀河は地球から3000光年離れている。それは光が私たちに届くのに3000年かかるという意味でもある。その間に、約35~40回の爆発がすでに起きている可能性が高く、現在、その光子が光の速度で地球に向かっている。
爆発が迫っている
かんむり座T星は約80年周期で爆発し、最後に観測されたのは1946年、その前は1866年に爆発した。「かんむり座T星が初めて疑いなく観測されたのは1866年のアイルランドの天文学者ジョン・バーミンガムによるもので、最も新しい新星の観測例は1946年2月でした」と英国ウォーリック大学の特別研究員マーク・ホランズはいう。「1946年の爆発前の数カ月間、かんむり座T星を観測していた際に減光がみられ、爆発が差し迫っていることを示していました」それはまさしく今起きていることであり、アメリカ変光星観測者協会は今年、かんむり座T星の光が著しく弱くなったことを発表した。「火炎星」が突然増光する前兆として知られている現象だ。「2月から3月にかけても、光度の減少がもう1度起きて、導火線に火がつけられたことを示しているため、私たちは数カ月のうちに次の新星爆発を見ることになるでしょう」とホランズは語る。約80年の時を経て、かんむり座T星は現在、次の爆発イベントに向かっています」