スタートアップ

2024.06.20 14:45

マネジメントの新ハック「優先事項のメンタルマップ」

Coralの社内ではもはや誰もが知っていることですが、私は数ある企業文化の中でも、特にリクルートとNetflixのカルチャーが素晴らしいと感じています。両社は全く別の業界の企業で、まるで共通点がなさそうですが、そのカルチャーは驚くほど似ています。具体的には、どちらも社員にかなりの裁量と責任を与える傾向があります。リクルートの「お前はどうしたい?」にしても、Netflixの「コントロールではなくコンテキストを」にしても、意思決定権を意図的に分散させている点が特徴的です。こうした組織体制から生まれる社風こそが、インターネット時代の到来に合わせて会社の変革に踏み切るアジリティをもたらし、起業家精神あふれる卓越した人材を今も惹きつけているのでしょう。

このカルチャーを見習いたいと考え、ここ数年、Coral Capitalでもいくつかの取り組みを進めてきました。まず、私自身の責務の放棄にならない範囲で、可能な限りチームに仕事を任せる方法を模索してきました。これは創業者にとってなかなか難しい課題ではあります。気を抜くとつい、あれこれ口を出してマイクロマネージしたくなるからです。しかし、そのやり方ではスケールできないばかりか、優秀な人材にとってストレスになり、会社から離れていく原因になりかねません。新たな人材からも敬遠されることでしょう。

「権限委譲(デリゲーション)」については、すでに多くのことが書かれています。私も以前、権限委譲の判断を助けるフレームワークについて記事で紹介しました。タスクの性質に合わせて、いつ干渉し、いつ一歩引き、いつその中間的なアプローチを取るべきかを判断するためのフレームワークです。SmartHRの宮田さんが書いた記事も人気で、「ToDoではなくイシューを渡す」をはじめとした権限委譲の様々なTipsを紹介しています。

しかし、権限委譲により最良の結果を引き出すためには、仕事を任せるだけではなく、さらに一歩進む必要があります。それは、権限委譲される側となるべく「コンテキスト(判断に必要な情報や背景知識)」を共有することです。現実として、一般的には創業者や経営幹部のほうが、他の社員よりも会社の複数の領域にわたってコンテキストを詳細に把握している場合が多いでしょう(もちろん、逆にリーダーよりもチームメンバーのほうが詳しい部分もあるでしょう)。そこでコンテキストを適切に共有しないまま権限委譲してしまうと、任された人がまったく見当違いの方向に進んでしまう可能性があります。伝えるべきだったコンテキストと同等の情報を知った上での意思決定であれば、まだ仕方ありません。しかし、もし不十分な情報に基づいて意思決定をしたのであれば、貴重な時間やリソースを無駄にしただけでなく、その社員の成長のためにもなっていません。
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文=James Riney

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