サイエンス

2024.06.12 14:00

「親指型ロボット」で手の機能を拡張、英ケンブリッジ大が開発

使用者は両足の親指の下にある圧力センサーで第3の親指をコントロールする(Dani Clode Design)

使用者は両足の親指の下にある圧力センサーで第3の親指をコントロールする(Dani Clode Design)

両手にいっぱいの荷物を持ってドアを開けるのに苦労したことのある人に良い知らせがある。英国ケンブリッジ大学のイノベーター集団が、手の機能を強化する「親指型ロボット」を開発した。
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その親指は、自分の指の稼働範囲を拡大し、つかんだり持ったりする能力を高める。スマホを持っている手に付けられた新たな親指がフックのようにバッグをぶらさげているところを想像してほしい。

「Third Thumb(第3の親指)」と名付けられたこの製品は、ユーザーの小指側の手の側面にストラップで固定され、2つの方向に稼働する。内蔵のモーターによって駆動され、使用者は両足の親指の下にある圧力センサーを使って動きとスピードをコントロールする。片方の足に圧をかけると3Dプリントされた親指が横方向に動き、もう一方の足に圧をかけると縦方向に動く。

複雑な操作のように感じるが、このウェアラブル親指に慣れるのは驚くほど早くて簡単だと研究者らは言う。Science Robotics誌に掲載された新たな論文には、幼児から90歳代までの多様な被験者グループで装置を試した結果が詳しく述べられている。その結果、協力者596人のうち、98%がThird Thumbの装着、操作、およびタスクの実行を首尾よくこなしたという。Third Thumbは様々な種類の硬いプラスチックと柔らかいプラスチックで作られている。
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装置の開発者で英国人プロダクトデザイナーのダニ・クロードは、Third Thumbが、上肢に麻痺や左右差がある、あるいは骨折や脳卒中による身体機能の衰えなどによる障害をもつ人たちのための道具になることを思い描いている。この親指型ロボットは、外科医や歯科衛生士など複数の装置を操作する人や、組み立てラインの作業者、あるいは強化された手というアイデアを気に入った誰にとっても便利に使えるだろう。

便利で万能な発明

「この親指は、これまでに私が見たなかで最も役に立つ拡張技術です。なぜなら非常に簡単に、かつ多種多様な目的に使えるからです」と、ケンブリッジ大学の認知神経科学教授であるタマー・メーキンがメールのインタビューに答えて言った。メーキンは脳の可塑性を研究する研究室の責任者で、最近発表された論文の共著者だ。親指型ロボットに関する以前の研究では、新しい身体部分の制御に人間の脳がどのように順応するかが調べられた。

「私たちは、ウェアブル技術の制御を容易にする基本原理をよりよく理解し、認知的だけでなく神経レベルでも安全であることを確実にするために数多くの基礎研究を実施しています」とメーキンは言った。
Dani Clode Design

Dani Clode Design

Third Thumbは、失われた身体機能を復活させたり、人間にとって意味のある限界まで機能を引き上げるロボティック外骨格などをはじめとする、近年増加傾向である拡張テクノロジーの1つだ。「デザイナーの立場から言うと、拡張とは人間とテクノロジーの新しい関係をデザインし、単なる手のための道具に留まらず、手の拡張部分になる何かを作り出すことです」とデザイナーのクロードはインタビューで語る。
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翻訳=高橋信夫

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