それにもかかわらず、CapCutは米国の議員にほとんど注目されてこなかった。2023年、上院商業委員会の消費者保護リーダーのリチャード・ブルメンソール議員とマーシャ・ブラックバーン議員は、TikTokのCEO宛ての書簡でCapCutについて尋ねていた。また、下院エネルギー・商業委員会の議員らも、TikTokの禁止法案に関する最近の公聴会で、CapCutについて言及した。しかし、ほとんどの議員は、TikTokへの懸念を表明する一方で、CapCutについては言及していない。
バイトダンスの反論
しかし、その一方、バイトダンスが米国政府を相手取った訴訟では、CapCutが広く使われていることが彼らの反論材料となり、TikTokの禁止法が米国憲法に違反する理由の一つに挙げられている。この法律は、TikTokのみではなく米国で入手可能なバイトダンスのすべてのアプリを禁止するものだが、米議員らは、TikTokに存在すると彼らが主張する安全保障上の懸念が、他のアプリにどのように存在するかを示せていないとバイトダンス側は主張している。「この法律は、バイトダンスが所有する他のアプリにも適用されるため、過剰な範囲に及んでいる。議会は、これらのアプリがリスクをもたらすことを示していないし、証明することもできないはずだ」とTikTokとバイトダンスは申し立ての中で述べている。
「米国政府は、TikTokやバイトダンスが所有するその他のアプリ上のコンテンツのすべて、もしくはその大半が、偽情報や誤情報、またはプロパガンダであると主張したことがない。しかし、この法律は、バイトダンスが所有するアプリ上のあらゆる発言を、いつでもどこでも、どのような方法でも封じ込める。 これは明らかな過剰規制だ」と、彼らは述べている。
「予期しない結果」を招く可能性
一方、ホワイトハウスのサイバーオフィスの元ディレクターのレックス・ブースは、中国政府がCapCutのユーザーに関する情報を入手し、彼らを監視するリスクはあるものの、TikTokに対する懸念に比べればそのリスクは小さいと述べている。「TikTokの場合は、ソーシャルメディアをコア機能としているが故に、中国政府が諜報活動を行う上で大きな意味を持つ。しかし、このような機能を中心に置かないCapCutが米国にもたらすリスクは、はるかに低いと私は考えている」とブースはフォーブスに語った。
ブースはさらに、バイトダンスのすべてのアプリを米国から締め出す試みは、他の敵対者や同盟国からの反発のような「予期しない結果」を引き起こす可能性があると警告している。米国のそのような試みは、米国のアプリを締め出した中国と変わらないと見られかねないと、彼は述べている(米国は、中国がグーグルのアプリを禁じたことを、危険な検閲だと非難した)。
「将来的には他の政府や組織が、米国のデジタル優位性に対して同様の措置を講じるリスクがある。世界の中国のような国が、米国が偽善的だと考えるだけでなく、実際に行動を起こす可能性がある」とブースは語った。
(forbes.com 原文)