欧州

2024.06.11 09:30

ロシア、「内」からもドローンの脅威に直面 パルチザンの攻撃続出

Drop of Light / Shutterstock.com

ロシアが新たな方面から破壊の波にさらされている。自国領内や侵略先のウクライナの支配地域で、パルチザン組織などが飛ばす小型のドローン(無人機)による攻撃だ。従来の保安対策ではこの新兵器に対応しきれず、新たに多くの対象が大規模な破壊工作(サボタージュ)の目標になっている。ウクライナが能力を向上させている長距離ドローンによる越境攻撃が続くと同時に、小型の破壊工作ドローンもロシア各地の目標を爆発・炎上させ、暗闇に投げ込んでいる。小型ドローンのこうした使われ方には、近いうちにロシア以外の国も悩まされることになるかもしれない。

クレムリン攻撃で狼煙

パルチザンは昨年5月、モスクワ中心部クレムリンに対する攻撃で狼煙を上げた。航続距離の短い小さなクワッドコプター(回転翼が4つのドローン)を、せいぜい数km離れた場所から飛ばした。モスクワはウクライナから送り出されたとみられるより大型のドローンの攻撃も受けているが、ドローン攻撃をしている組織はロシア国内にもある。クレムリンに対する攻撃が象徴的なものだったのに対して、現在起きている攻撃の波は実害を意図したまったく現実的なものだ。

とはいえ、こうしたドローン攻撃をロシアで日々起きている雑多な混乱と区別するのは難しい。ロシア国内の破壊工作活動を追跡しているウクライナのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)機関「モルファー(Molfar)」は筆者に、小型ドローンが使われた事案をとくに区別して収集しているわけではないと説明している。

それでも、状況から現地の組織によるドローン攻撃だったことがうかがえる場合もある。たとえば最近、ロシアの占領下にあるウクライナ南部メリトポリの南20kmほどの地点で、ロシア軍のブーク自走防空システムがFPV(一人称視点)ドローンに撃破されたと報告されている。撃破地点は前線からおよそ100kmも離れており、ウクライナ側から飛ばすFPVドローンではまったく届かない距離だった。

5月にはロシア南部ボルゴグラードで、走行中の貨物列車が、ディーゼル油を運搬していたタンク車両にドローンの直撃を受けて脱線するという出来事もあった。ドローン攻撃による列車の脱線は史上初めてだった。ウクライナの長距離ドローンは知られる限り、動いている目標を攻撃する能力はなく、走行中の列車を攻撃したこともない。これも短距離のFPVドローンの攻撃だったもようだ。

ロシア国内の変電所がFPVドローンで攻撃される様子を映した動画もある。古い変電所はいまだに冷却に可燃性の油を使うため、火がつくと激しく燃え上がり、小さな爆発にも弱い。ロシアは変電所に軽量の網をかぶせるようになっているが、これは180kgの長距離ドローンを止められるようなものではないので、おそらく破壊工作用の小型ドローンが落とす爆弾に対する防護なのだろう。

これらの攻撃は、小型ドローンが安全な距離から高価値目標を狙えることを示している。そして現在、こうした攻撃を実行できる組織が増えてきている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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