モビリティ

2024.06.14 12:45

ロールス・ロイスのピュアEV“SPECTRE”は、駆る喜びを味わえるドライバーズ・カー


市街地から、首都高速に入りさらに運転を続けてみればSPECTREのエフォートレスな楽しさは増す。コーナーごとにプラナー・システムが四輪駆動システムを作動させ、ステアリング、ブレーキ、前後のパワー配分、そしてサスペンションをコントロールし、車体を安定させる。

連続するコーナーをひとつ抜け、ふたつ抜けていくうちに、車両のベース価格が4,800万円という超高級車を運転している緊張感はやがて消え去り、気づけば無心で駆け抜けていた。

静粛性についても触れておかなければならないが、もちろん、言うまでもなく静か。どうしても音を立ててしまうエンジンがないのだから当然だ。さらに、ボディ底面に配置されているバッテリーには道路からのノイズを遮る効果もあるのだという。

車内での会話で声を大きくする必要など一切なく、かつ静粛性の高さは音楽のリスニング環境としても極上。電子音楽やロック、ジャズ、そしてポップスとさまざまな音楽を聴いてみても、繊細な音までクリアに聴き取れる上に、静粛な車内に漂う残響までも感じられるほどだった。

かつてロールス・ロイスといえば、後席にゆったりと身を委ね、運転はドライバーにまかせるショーファーカーのイメージが強かったかもしれない。もちろんSPECTREの後部座席だって充分快適ではある。

しかし、このSPECTREはその随所から、このクルマがドライバーズ・カーであることを主張する。自らステアリングを握り、自分の意思で道を選ぶことを好む人こそ、このクルマを存分に楽しむことができるだろう。それも、あくまでもエフォートレスに。

新しい時代のラグジュアリーは、旧来の価値観をただ受け入れるのではなく、自らが心地よくいられるものを選ぶ人々が作っていくものだ。そんな新時代の価値観に、このSPECTREはぴたりと調和するように感じた。

Text by Tsuzumi Aoyama

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